バスドラをピックアップするマイクロフォンにフォーカスを当てて数回書きましたが、今回は“ PAでそのマイクB.D(バスドラ)に立てますか ?! “からスタートして、コンデンサーマイクロフォンの構造を深堀りします。
僕は、担当しているアーティストのリズム録音を行うスタジオに足を運んで見学をする事があります。
理由としては、最新アルバムへのサウンドメイキングや、ドラムマイクロフォンのアレンジの勉強の為です。
コンサートのマイクロフォンチョイスはツアーに対する耐久性や湿度に強いダイナミックマイクロフォンを使いますがスタジオレコーディングでは、コンデンサーマイクロフォンを中心に考えられています。B.D(バスドラ)に良く立っているのは、ノイマンのU47です。
20代の頃に働いていた会社には、オーケストラのコンサートの為にノイマンのマイクロフォンが多数ありました。その頃は会社の機材ですから自由に使えましたが、今思いますとずいぶんと高価なマイクロフォンを多数所有していたと感心します。
時は数十年経ちまして、あるバンドのリハーサルのサウンドチェック中に、ドラマーの方が“ コンサートで、ノイマンU47をB.Dに使ったらどうなんだろう!? “ と呟いたのです。その言葉を聞いて、そういえば20代の頃に使っていたのを思い出しまして、1本購入しました。

実際には購入するまでには、デモ用のU47FETモデルを借用させて頂きB.Dの音圧に耐えられるのか!?
テストを繰り返しました。写真のように、B.Dの穴を開けたポートに立てても歪む事は無く(-10dBのPadは入れる)また、この穴に生じる風にもダイヤフラムは吹かれませんでした。
※コンデンサーマイクは構造上、ダイナミックマイクに比べて繊細な機材です。実際ご使用される場合は環境やセッティングを十分にご確認/調整のうえ自己責任でご利用ください。
それでは、ノイマンU47 FETのデータを見て見ましょう! まずは、F特から

①の低音域から中音域まで、フラットな特性であります。そもそも、B.Dをピックアップする為の設計では無いのでとてもキレイな特性です。
②の6KHz周辺にディップ(へこみ)はありますが、気にならない程度です。ボーカル録音ではこの6KHz周辺にディップが良い結果になると思います。
③は、周波数200Hzからのハイパスフィルターカーブです。指向性も見てみましょう!!

コンデンサーマイクロフォンの周波数特性はとてもフラットです。では何故に?
ダイナミックマイクロフォンとは基本的な構造が違います、解説しましょう!
コンデンサーマイクロフォンの名前の由来は、電子部品のパーツのコンデンサー(キャパシターとも呼ぶ)のようにダイヤフラム(可変電極)とバックプレート(固定電極板)に電圧を与えて、電荷を貯めるのでそのように呼ばれています。

第6回でダイナミックマイクロフォンの構造について書きましたが、コンデンサーマイクロフォンは全く構造が違います。①の電源+48vをコンソールまたは、そのマイクロフォンの専用電源から供給する必要があります。

電源供給+48Vは、ファンタム電源と表現されます。ファンタムとは「幻影」「幽霊」「亡霊」の意味があります。何故、”ファンタム”と表現されるのかというと、マイクケーブルを通して電源を供給するため、電源の配線が見えないことからきています。上の図の+48Vのスイッチを押すと赤くインジケートされそのマイクロフォンが接続された回線に+48Vを供給します。

2 Hot,3 ColdのXLRのピンより直流+48V電圧が供給されます。もし、間違ってダイナミックマイクロフォン(バランス型の)にファンタム電源を送っても2 Hot,3 Cold電圧が正確に等しいため影響はありません。ファンタム電源は電流制限回路を備えており、ショートしたり誤配線されたりした場合もダイナミックマイクロフォンの損傷を防ぎます。
ファンタム電源を送ると、②のダイヤフラム(可変電極)と③のバックプレート(固定電極板)の間に電気が貯ります。音波により②のダイヤフラムが動くと、固定電極板との距離が変化し内部の容量値が変わります。この容量値変化を音声電流として出力します。この音声電流はとても微小な為、マイクロフォンの内部にプリアンプ(増幅)が組み込まれています。マイクに組み込まれたプリアンプもコンソールから送ったファンタム電源で駆動します。実際のコンデンサーマイクロフォン(ノイマンU87)の写真を見てみましょう。

コンデンサーマイクロフォンの周波数特性がフラットである理由は、ダイヤフラムの薄さでもあります。3〜6ミクロンのマイラー・フィルムに金属を蒸着させています。僅かな音波でもダイヤフラムが動きますので、繊細で明確な音がピックアップ出来ます。
実際にコンサートでU47を立てたマイクアレンジです。

バスドラには、ノイマンU47とエレクトロボイスND868を立てています。FOHのコンソールには、この2本を立ち上げてU47をメインで使っています、もし本番中に問題が起こった時はND868を使います。メンバーにモニターで返すのは、ND868のみ使用します。使用した結果は、ドラマーのバスドラの表現(強弱など)がピックアップ出来てとても良かったです。
テストでノイマンU47FET以外にもバスドラにコンデンサーマイクを立てましたが歪んでしまったり、バスドラの穴に発生する風で吹かれてしまい、良い結果ではありませんでした。ノイマンU47FETはとても優れたコンデンサーマイクロフォンだと思います!!
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