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音響良技録店 第6回:マイクロフォンのチョイスを具体的に説明【Drum編】

2025.07.02

還暦を迎えて早1年が経ち、少しは落ち着いたスケジュールになると思いきや現場数もまだまだ沢山有り、それはそれで嬉しい事で感謝でしか有りません。それに増して4つの学校で音響を教えています。

よくいつ休んでいますか!?っと言われますが、正直に言いますと全く休んでいません。

学校を減らせば休めるのですが、1名でも多く学生がサウンド・ミキシングに興味を持って欲しいという願いもあります。

アーティストの音を預かる身としては、アーティストが奏でる音や、歌声はそのアーティストの” 魂 “や“ 生き様 “でもあります。ですので真剣にマイクロフォンのチョイスを考えています。

20代は大きなカンパニーに所属していたので、そのカンパニーが所有するマイクロフォンで仕事をしていました。先輩のマイクアレンジ(楽器に立てるマイクロフォンのチョイス)を参考にしていました。32歳で独立をしてからは、積極的にマイクロフォンを勉強して購入をしてきました。

まずは、音楽で重要なDrum サウンドのマイクロフォンのチョイスについて書きたいと思います。

B.D マイクロフォンについて

Drum Setのマイクロフォンチョイスでまず最初に考えるのは、B.D(バスドラ)です。Kick(キック)とも明記します。音楽でリズムの最初にB.Dを踏みます、これが気持ち良く聴こえないと音楽にノレないですよね!?

現在、世界で一番使われているB.DマイクロフォンはSHURE BETA52Aです。

2014年に発売されてからロングセラーだと思います。まず、見た目が太い音をピックアップする感じの形状ですよね!ちなみに、BETAシリーズのマイクユニットは全部同じで、ウインドスクリーンや筐体を変えています。

前回、説明したF特(周波数特性)について説明します。

①の部分は近接効果です。音源にマイクロフォンが近くなると低音が持ち上がる単一指向性マイクロフォン特有の現象です

では、なぜに近接効果が起こるか!? SHURE SM58を題材に説明します。

正面から入る直接音と、横から取り入れた音に距離を作る事によって時間差をつくります。(メーカー説明では約8.5mmの長さ)

正面からの音の音圧を最初に出力するので、前方方向の音を拾います。まさしく単一指向性ですね。

ここで重要なのは、横から取り込んで正面に送り込んだ音と、後ろから取り込んだ音が同じ時間にすることです。

同じ時間で到達した音が、ダイヤフラムの正面と裏側でダイヤフラムを揺らすのですが相殺されるので音圧エネルギーは発生しません。

その際に周波数によって圧力の相殺が変わります、音源がダイヤフラムに3mmと近くなると低音圧力が圧倒的に上がるので近接効果になるのです。

それでは、BETA 52Aの説明にもどります!!

②の部分は、B.Dのアタック感がすでに強調されています。アタック感は2kHzから6kHz。

ドラムのビーターが、B.D(バスドラ)のドラムヘッドにヒットした時のアタック音の事です。

③の部分は、余計なアタック音は必要無いから減衰するようになっています。*ロールオフとも言います。

この①②③の特徴により何故にSHURE BETA52Aがロングセラーで全国ライブハウスに常設として導入されているか推測しますと、周波数特性がB.D(バスドラ)の音をピックアップするのに適している、近接効果を良い方向に利用すればとても太いB.Dサウンドが作れる。マイクロフォンでベーシックな音が作られているのでコンソールのイコライザーポイントをもっと積極的に活用できるという点が考えられます。

まずは現在のB.D(バスドラ)スタンダードマイクロフォンBEAT 52Aを試してみて、それを軸にいろんなメーカーのマイクを試す事によって、自分の好みのB.D(バスドラ)マイクロフォンを見つける事ができると思います。

次回は、小松が愛用するB.Dマイクロフォンをご紹介します!

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小松久明(音響良技録店)
サウンドエンジニア/サウンドデザイナー。2021年 (株)K.M.D Sound Designを設立。毎年100本以上のコンサートミキシング、企業講演、授業等を通じてサウンドエンジニアの技術を教えている。
記事内に掲載されている価格は 2025年7月02日 時点での価格となります
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