ワタクシ「あの澤田」とゲストで一つのテーマをしっかりかつサクッと掘り下げる「あのラボ」シリーズ。
今回は、前回好評だった「クリップマイクでサクッとアコギを録ってみよう!」に続きまして、同じハードルが高く思われがちな生ピアノの録音に挑戦します。
以前に行った別企画の際にピアノの記事の反響がこちらの想像よりもかなり多く、ピアノを簡単かつ高音質で録音をしたいというニーズを持った方が大勢いらっしゃったので、今回のテーマに決定!
ピアノレコーディングの写真など見ると、ドラムに次いでマイクがいっぱい立ってるイメージがあると思いますが、マイクが2本でもかなりのクォリティで録音できるんですよね。
まずは録音自体はそこまで難しいものではないし、思ってる以上の音質で録音できるんだよって、皆様の心のハードルが下げられればと思います!
今回のパートナーは現役キーボードである弊社ECスタッフ「SD村上」と一緒にピアノスタジオノア下北沢店にお邪魔してきました!
今回も前回と同じ以下の2製品をピアノ用にステレオで用意しました。
DPA Microphone:4099Aシリーズ
Neumann:MCM114シリーズ
比較対象にAKG C414 XLS Stereo pairも同時に立ててみました。
収録機材も前回同様に良質なプリアンプが8ch付属しているSSL/SSL18と、StudioOne 7(32bit/96khz)を用いて、演奏のムラを避けるためにワンテイクで収録しました。
澤田:さて、レコーディングを始める前にいろいろ聞いてみたいのですが、村上くんは実際に生ピアノ録音って体験したことありますか?
村上:学生時代にあります。大学の授業でやった時は沢山のマイクを置いてそれぞれどういう効果が得られるかを検証するというコンセプトだったので、オン、オフ2本ずつにアンビエンスやバウンダリーも置いたりとにかく沢山のマイクを立てましたね。
澤田:ご実家にグランドピアノがあるそうですが、そのピアノの録音ってしたことあります?
村上:意外と中古の古いやつだとグランドでも手が届かないこともないので学生時代に頑張って買っちゃいました。小さいサイズでもかなり場所を取るので部屋が狭くなっちゃいましたけどね。若い時に安いペンシル型のコンデンサーマイク2本で挑戦してみたことあったのですが、あまりうまくセッティングができず挫折してしまい、それ以来自分でやる時はピアノのソフト音源に頼ってしまってます。
澤田:アップライトも含め、自宅にピアノがある方は一定数いらっしゃると思うのですが、さっき言ってたみたいにピアノのまわりにいろんなマイク立てるためのスタンドとかを置くスペースまである人はなかなかいない。ボーカル以外で何かにマイクを立てるってちょっとハードル高いイメージありますよね。部屋の形によるけど、物理的にマイクを好きな位置に設置することも難しいですし。
村上:ですね。マイクスタンドも当時あまり良いものを持っていなかったのでどうも不安定でピアノのハープ部分に落っこって来ちゃったり…
澤田:個人的にはオンでステレオ、可能であれば少し離れた場所に楽器全体を俯瞰で見る様にオフの2本の合計4本で録音すること大愛ですが、ピアノ中心ではない楽曲の場合はオンの2本でも問題ないと思ってます。今回の様なオンのセッティングでもスケール感の大きい音が録れまして、そこを体感して欲しいなというのがこの企画の個人的な裏テーマです。
村上:そうなんですね。いろんな雑誌とかを見ると離れたところにいろいろマイクが置いてあるイメージで、それをマネて自分でやってみたらお部屋が狭いからか変な反響入っちゃいました。(この部分は前回のvol.1をチェック!)
澤田:オフは部屋の影響を受けやすいので、いい感じの場所を探すのがポイントなのですが、部屋が狭いとそこにマイクを固定するのがまあ難しい。。。
前置きが長くなって来たのでまずは色々やってみましょう!
まず持ち込んだ6本のマイクをセッティング。音を聴きながら微調整していきます。ウォーミングアップ中のスタッフ村上の表情もいい感じに仕上がって来ました。
どちらもマイクをピアノ本体の金属部分に磁石で固定するだけととっても簡単です。マイクからかなり細い専用ケーブル(1.8m)が付属しているので、インタフェースの位置によってはケーブルを別途用意しなくても大丈夫かもしれません。実際に今回の位置では直接接続できました。
すいません。。お借りしたDPAのデモ機の調子が悪く、だんだんノイズが多くなって来てしまい、今回は割愛させて頂きました。
A:歯切れのいいリズムが特徴の曲
B:響きを感じて欲しいアルペジオ系の楽曲
C:クリップマイクのサウンドがいい感じでしたので、せっかくなのでC414を少し離したアンビエンスを含め4本でのレコーディングもレコーディングもしてみました(下の写真参照)
今回はマイクの音を可能な限りそのままで行きたかったので、最後のC_MIX_EQ以外は No EQ&No Compです。ただそれもアンビエンスの方のローをちょっとカットしたのみで、普段ならマイクの方でやるレベルの処理になります。
澤田:さて、どうでした?想像よりちゃんと録れてたんじゃないかな?
村上:そうですね。セッティングはわりと手軽でしたが音はよく録れてますね。
澤田:C414は低音まで綺麗に収録されるから、ここからどうにでも持ってける素直な音だったと思います。個人的にはここの部屋の場合ローカットとハイブースト入れると思うので、XLSではなくXLIIの方がハマったかもなと。
村上:位置的にピアノの屋根の反響も取り込んでいて自然な音で録れてますね。でもこれ単体だとアタックはもう少し欲しいのでEQを入れて加工したいですね。
澤田:逆にNeumannの方は最初っから音源の様な音で色んな意味で分かりやすい音だよね。リアクションから好きそうだったけど、どうでした
村上:はい、こちらはそのままでも完成系の音に近くて、後の作業が楽そうですね。オンマイクなのでアタックもしっかり録れていながらもカリッカリというわけでもなくて使いやすそうだと思いました。
澤田:次にオンをNeumannのまま、オフの位置までC414を移動して合計4本でも録音してみましたけど、オンのみに比べてどうでしたか?
村上:混ぜるとさらに立体感が増しますね。お互いのマイクの足りない部分を補っている感じがします。今回機材トラブルで没になってしまったDPA 4099Aは高域よりの印象でそれがキャラが立っててよかったと思ってまして、今回使用したC414 XLSのような距離違いの他のマイクと組み合わせるとくっきりした音色になりそうな気がしました。
個人的にどれか1機種に絞って録るという場合はやっぱりNeumann MCM114は良かったですね。オンマイクは単体だったり、そのままだと使いにくいものなのかなと勝手に思っていたのですが、このマイクだけでも十分成り立つことに驚きました。
ピアノ録音はマイクを立てまくる方が良いという固定観念が崩れた気がしました。設置も置くだけでスタンドいらずでセッティングも楽ですし。Neumannって高級マイクのイメージですが、このマイクはピアノ録音の最初のマイクにもお勧めですね。
前回のアコースティックギターの録音と合わせてクリップマイクを使った企画でしたが、クリップマイクを打ち出したいというよりは、こう言うアイテムを使って工夫すれば結構ハードルが下がるから、どんどん挑戦して欲しいなといった次第であります。
今回の記事の内容以外にも、こんな環境でこういうモノを録りたいんだけど、、、といったご相談も随時受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。