リバーブとは空間系エフェクターにカテゴライズされる一部であり、原音に残響を付加するものです。
空間系エフェクターは大きくわけてリバーブ、ディレイ、エコー等にカテゴライズされますが、この3つは原理的に似ています。
ディレイによる効果で一般的なものは「やまびこ」です。声や音を発したときに山や壁に反射して時間的に遅れて聴こえてくるものですね。山の頂上にいったときに「ヤッホー!」と叫んだ経験はきっと皆さんにもあるでしょう。
このとき何回かこだまがかえってきますが、いくつかの山が連なっている場合、近い山からは早く大きく聴こえ、遠い山からは遅く小さくかえってくる事によるものです。
日常に暮らしている中でもホールや室内では壁との距離が近いため音の反射が極めて短い時間で発生しています。音が壁や天井、床等にあたって初めて反射してくる音を初期反射(アーリーリフレクション)といい、その後の残響音は音が減衰しながら反射を繰り返す事で発生します。いわゆるここがリバーブの領域です、ディレイとリバーブの関係性が分かってくるのではないでしょうか?
先述した通り、私たちが聞いている部屋の残響は壁に当たった音が縦横無尽に反射して、時間的に遅れを伴った反射音が連続的に聞こえているものです。ビリヤードのファーストショットの玉の動きをイメージをしてみてください。
音の動きはそのようにエネルギーを徐々に減衰させながら動いているのです。先人たちは質の良い残響をもとめ、ホールや教会を設計しました。現在でもこの質のよい残響を求め、ホテルや古いお城などでコンサートやレコーディングが行われるケースがあります。
人工的にリバーブを作るエフェクターが開発される前はエコールームやエコーチャンバーと呼ばれる反射する壁で構成された特別な部屋で実際にスピーカーから音を出しその部屋の残響をマイクで集音して付加していました。
なんとも原始的な原理ですが部屋の容積や床の材質、壁の角度等で音質が決まり、より長く最良の残響が得られるように作られていました。
エコールームは部屋の設計により残響時間が決まってしまうため自由度が高くありません。その代わりに残響効果を作り出す「リバーブ」が開発されました。
まずはじめに開発されたのがスプリングリバーブです。これは「Roland JC-120」や「Fender Twin Reverb」などギターアンプにも小型のものが搭載されている”アノ音”で有名です。ちょっと聴いてみましょう。
仕組みを開設すると、スプリングの一方の端に音声信号によって振動を起こすドライバーユニットがあり、反対側に振動を音声信号に変えるピックアップが取り付けられています。スタジオ仕様のものとしてはAKG-BX-20があり、多くのスタジオに導入されていました。大型のスプリングリバーブで重量は50Kgほどあり、残響時間の調整は電気的なダンピング調整方法により容易にできるよう設計されていました。
スプリングリバーブの次に開発されたのはプレートリバーブと呼ばれるその名の通り鉄板を振動させて残響を取り出すリバーブでした。
薄い鉄板の中程に取り付けたドライバーユニットによって鉄板を振動させ、端側に取り付けられた2つのピックアップによって鉄板の振動の余韻を残響音として拾います。
現在のデジタルリバーブのように容易に残響時間の変更はできませんが、プレートリバーブの代表としてEMT-140があり、鉄板に平行に設置されたダンピング板を押し付けることで残響時間を可変出来るように設計されていました。まさに力技ですね。
このプレートリバーブは高域の特性がスプリングリバーブよりもよく、自然なリバーブ感が得られるという事で重宝されました。今でもリバーブのプリセットには欠かせないものになっています。Universal Audio UAD-2でもEMT-140をモデリングしたプラグインが用意されています。このプロモーションムービーの前半でEMT-140の姿を見ることができます。
Rock oNで取り扱っているプラグインとしてEMT140のような残響を得ることができる製品をピックアップいたします。
序盤に説明したようにデジタルリバーブは時間の不規則なデジタルディレイを組み合わせる事によって、ホールやプレートリバーブなどの残響音をシミュレートすることが可能です。これは微妙にディレイタイムの異なる音を集合させて連続した残響音にきこえる人間の聴覚の錯覚を利用したものです。
いわゆるデジタルディレイを応用したものでシミュレーションを行うためには多くのデータと高速な演算を必要しましたので非常に高価なものでした。
デジタルリバーブには様々なパラメーターが用意され、ディレイタイム、音量、音質の変化、フィードバック等を細かく設定する事でラージホールやスモールルーム等といった残響をシミュレートする事ができるようになっています。これらパラメータのセットがアルゴリズムとしてプリセットできるものも多く、従来のアナログな方式のものと比べて使い勝手も飛躍的に向上しています。
代表的な製品の「Lexicon 480L」は多くのスタジオが導入され、それがあるというのがいわゆるスタジオのステータスとなっていた時代もありました。ちなみに「Lexicon 480L」はまだまだ現役で稼働しているところも多く、今でも割と多くのミックスで耳にすることもできます。
デジタルリバーブの進化、そしてCPUの進化によって更にリバーブは自然な響きを得たサンプリングリバーブが登場しました。
デジタルリバーブが音の反射や減衰をシミュレートし演算で残響を作り出すのに対し、サンプリングリバーブは実際の部屋の残響データを解析して残響をシミュレートします。
サンプリングリバーブは、実際のホールやスタジオ等で短いパルス音を鳴らして収録し、そのデータを解析して作られたインパルスレスポンス(IRデータ)をもとにナチュラルな残響音を再現します。
以前は非常にCPU負荷が高かったため音質はナチュラルながらも、IRデータのロードに時間がかかったり、リバーブタイムの調整幅にも制約があったり、細かいパラメーター調整がしにくかったりと少々制約がありました。
しかしながら昨今のCPUの高速化によってサンプリングリバーブをリアルタイムで鳴らせたり、デジタルリバーブと同じような軽快な操作感で使用することが可能となっています。