みなさんこんにちはPD安田です。前回「Omnisphere」を紹介させていただきましたが、
今回は同ブランドの「Keyscape」を紹介していきます。
ピアノってご承知の通り学校内でも誰かしら習っていることがある、また音楽の授業で弾いて言えるのを聴いたことがある、もしくは道端で演奏を聴いたことがあるなど、日常的にも慣れ親しんでいる楽器です。音楽的な帯域をほぼ網羅しているので、作曲のツールとしても必須のサウンドと言っても過言ではないのですが、このピアノが演奏できるソフトウェアはDAW付属のものから様々なメーカーがソフトウェアとして、さらにシンセサイザーなどなどピアノは必ずと言って手に入りやすいサウンドです。
そしてKeyscapeはピアノ音源以外にも、エレピやharpsichord、Toy Pianoなどなど鍵盤楽器の代表となる音色が入っているとともに、Spectrasonics特有の音の太さがありますので、調べていくといろんな方が参考にできるいいレビューが多くあります。前述の通りKeyscapeは他のピアノ音色と比べて、太めの傾向にありますので、生な音質はもちろんですが、加工するにはぴったりの音源となっております。
さて、今回の本題はKeyscapeの音色を使って、どんな加工ができるのか?を紹介できたらなと思いますので、早速色々実験していきたいと思います。それではいざ!
まず、サウンド的にどうしようか困ったら?そうです、みんな大好き「歪ませる」です。きっと万人が気持ち良さを感じるかと思います。
そもそも音楽的な周波数帯域を網羅している楽器としてピアノが存在しており、本来は綺麗に響かせて聴かせるのが多いかと思います。(倍音も豊かな楽器なので)そこで敢えて変に歪ませる作戦に出てみます。歪んでいるピアノって、ホラー系に使われがちですよね(しかも爆音)これは昔のラジオでまだ綺麗に鳴らせられなかった時代に、音量をMAXにするとスピーカーで歪むというのがありました。録音技術が発達する前からピアノがあり、当時の録音ではピアノが成せるダイナミクスと帯域を全てカバーすることはできず、歪みのピアノ=レトロ感がなぜか演出されている気がします。なので、楽曲での使用においてもピアノを歪ませるのは「あり」ということで、特にモノラルのサウンドにすることで、ピアノのメロディラインを強調することができ、結構積極的に使えます。
そこで、歪みは歪みでもキャラ的に種類がありますので、Overdirive、Distortion、FUZZで実際にどう活用できるか検証していきたいと思います。ちなみにOmnisphereを使えば、ソフト内でエフェクターを加えることができますので、こちらの機能を駆使して加工していきます。
★サウンド 1(3ループで、歪みのパターンが変わる様になっております)
選んだのはStomp(Blues Driver)、Metal(Metalzoneのアレ)、FUZZの3パターンで、聴いていただくとおりこんな感じに歪ませられます。きっと誰もがMetalzoneを聴いて可能性を感じたと思います。ホラー系の効果音にも使えそうです。ホラーと言えばやっぱりメタルが合いますね。
なおOmnisphereですと発音に対してアタックとリリースの調整が可能なので、アタックは普通の音で、リリースを歪ませてみます。
★サウンド 2
レイヤー A
レイヤー B
レイヤーAではピアノのアタック音を重視し、ノートを伸ばすことで、歪みのサウンドが増してくるやり方です。これはこれで面白い演出ができるのではないかなと思います。さっきの純粋なアタック音にサスティーンだけMetalをかますとだいぶいい感じです。これは楽曲にも積極的に使いたいですね!
続きましてピアノの難しい要素として、バンドやアンサンブル楽曲におけるピアノの立ち位置になります。(ピアノに限らずコード系のサウンドは共通して言えるかなと思います)まずオリジナルの楽曲がピアノ主体であれば、ステレオにして空間をイメージしつつ演出するのが多いですが、バンド物になるとモノラルにした方がかっこよかったりします。そもそもピアノ帯域ってベースラインの低音もありますし、上物のコード、そしてオブリガード的なちょっとパーカッシブな高域も演出可能で、さらにメインのメロディに対してユニゾンして追っかけてみたりと、幅広い聴かせ方が可能です。なので最初の段階でもステレオにするか、モノラルにするかで作曲の取り掛かり段階でもだいぶ気分が変わってきます。またピアノ音源あるあるですが、左手の低音側がPANの左に寄り、高域は右に寄りがちです。ピアノという存在感でしかもあんまり主張して欲しくない時はいっそモノラルにしてしまうというのも手かなと思います。
さて、Keyscapeの音源説明になりますが、まず基本音源の出力はステレオになります。ここでモノラルにしたいよ!となるとき「DAWでL/Rを狭める」か、あるいは音源側でモノラルを選ぶかになりますが、Keyscape側でMONOにすることは可能です。なのでステレオとモノラル用と2つ音源を立ち上げて、要所要所で切り替えてしまうという作戦です。ちなみに最近はスマホとかのスピーカーで直接再生ということもありつつ、一応スマホのスピーカーでもステレオ再生が可能ですが、出ている場所は一箇所なので、そこまで広げても恩恵は受けにくいイメージにあります(でも最近のスマホは再現度がかなり高くなっていますけど)。なので、最近の音楽はここをこだわってもあんまりインパクトを生み出せないのですが、映像ありきでの見せ方に関してはこの演出は効果あるので、作り出すコンセプトに合わせてイメージを作っていくといいでしょう。
★サウンド 3
1フレーズ毎にモノラル→ステレオ→モノラル→ステレオな順番で最後はMIXという感じになっております。モノとステレオ、もしかしたら混ぜてもいいかもですね。要研究です。
さてさて続いてはピアノの音色による特徴を活かして、アタックとサスティーンを加工し、音作りに挑戦してみます。そもそもピアノといえばアタックの絶妙な固さとサスティーンの響きが特徴的で、このキャラがあるからこそ「ピアノ」と認識されます。なおピアノに限らずですが、アタックの響とサスティーンの響きの感じで、その楽器が持つキャラクターが決定されるのですが、ここを崩してみるとどんな可能性があるのか?気になってしまったので、実際にいじっていきたいと思います。ここもOmnisphereを使ってKeyscapeの音をいろんな角度で作ってみたいと思います。
★サウンド4
もうちょっと詰めれば面白い音が作れるかな…と思いましたが、ドラムに関してはアタックとリリースをまとめればそれっぽい感じにできます。流石に本物のドラムのようなキックにするにはちょっと難しいかなと思いますが、まあ悪くはないかなと思います。なおキックとスネアとその他は、それぞれキャラが異なりますので、トラックを4つに分けて音作りと打ち込みを行なっていきます。
キックトラック
スネアも似たような設定ですが、響線の要素が欲しかったのでノイズを足しております。案外簡単なので、やってみて欲しいですね。(打ち込みのノート次第で変わります)
そしてこのキックの音作りにポイントになるのはFilterを使ってレゾナンスの値をあげ、高域部分をちょっと目立たせます。その上でコンプで突っ込み具合を強調させ、割と今回のような感じに出来上がります。EQもここで欲しいポイントを上げ下げして、効果があれば欲しい帯域が演出できているので、チェック用にインサートするのもおすすめです。
ベーストラック
ベースはSine波を足すといい感じかな…と思いますが、こちらもピアノだけで作ってみております。もはや原型を留めていないですが、ベースです。
最後に装飾関連ですが、こちらにはSuqareの波形とノイズを足して、ちょっと抜けの感じを足しております。
とこんな感じに、Keyscapeの音源の紹介だったはずがOmnisphereを組み合わせての活用を書いてしまいましたが、操作するポイントがわかると、割と無限大に音色作りが可能です。もはや原型がなんだったのかわからない感じになっているのですが、ちょっと次のネタに行き詰まった方は、こういう遊び方もぜひやってみて欲しいですね。ちなみに音作りに差し当たって、パラメーター変更を行ってはいますが、Omnisphereのほんのごく一部しか触っていないです。本当は裏の設定でモジュレーション関連のマトリックスや、設定やら種類やらまだまだたくさんあります。もし変な効果音とか作りたい方はこの部分も触れられるようになると、この音源でできないことは無くなるんじゃないかなと思います。
さて、いかがでしたでしょうか?ここ最近、知っての通り雰囲気を伝えれば自動的に作ってくれる時代になりましたが、遊び要素を取り込むのは、まだまだ無限大で確立する話ではないので、是非にいろんなアプローチを試して、オリジナルの楽曲を作っていただければと思います。