スタッフレビュー

Strymon TimeLine MXの可能性を探る

2026.09.07

先日Rock oN CompanyのYoutubeで配信したウェビナー「TimeLine MX発売、ギター用だけではもったいないTimeLine MX制作活用術」では、Strymon本社のプロダクト開発担当者Sean Halley氏と、通訳兼ギタリストの二木元太郎氏を迎え、2011年発売の初代TimeLineから15年ぶりに登場した新型ハードウェアディレイ「TimeLine MX」の活用術に焦点をあて掘り下げました。

ギターでの基本的な使い方はもちろん、ボーカルやシンセ、ドラムマシンなど、さまざまな音源にTimeLine MXを適用。実際に配信内で確かめました。

こちらの記事では、配信内で紹介した内容に加え、時間の都合で紹介しきれなかった活用例なども交えながら、Strymon TimeLine MXの可能性を探っていきます。

★配信の動画はこちら

まず、TimeLine MXで何が変わった?なにが進化した?

まずは、Timeline MXになって大きく進化した点として、最大の進化点は、下記の図のように、2つのアルゴリズムを直列・並列で同時に使える「デュアルエンジン」化。

組み合わせは300通り以上に増え、Oil Can(オイル缶エコー)やリバーブ、音を粒状に分解するSpectralといったアルゴリズムも新たに搭載されました。
さらに最大5分のステレオルーパーを内蔵し、ディスプレイも8セグメントから視認性の高いOLEDへ進化。もはや単体のディレイペダルというより、コンパクトなマルチエフェクターと呼べるものです。

まずはギターで

もちろんギターでの表現力も大きく進化しています。配信内ではまず、8つのタップそれぞれにフィルターや音量、パンを個別設定できる「Multitap」で多彩なリズムパターンを実演。

0:17:22〜

続いて原音を細かい「グレイン」に分解し、密度や伸長、再生方向を調整できる「Spectral」を、リバーブと直列でつなぎ音を広げるデモとともに紹介しました。

0:19:55〜

ほかにも、オイルの入った機構を再現したヴィンテージ感のある「Oil Can」で温かくモジュレーションのかかったヴィンテージ感を、原音を邪魔しない「Reverse」のアルゴリズを同時掛けする使い方を実演。

0:39:00〜

さらに配信後半では、4つの再生ヘッドを個別にパン・フィードバック設定できる同社のVolante系のヴィンテージテープディレイが紹介されました。

1:00:06〜

他の楽器や機材に使用してみる

ここからは、ギター以外に実際に強力なTimeline MXのアルゴリズムを使用してみます。TimeLine MXをハードウェアインサートし、パソコンとオーディオインターフェースの間にTimeLine MXを挟んで、DAW上のトラックにTimeline MXをかけます。

まずボーカル素材には、ピッチシフト・ディレイの「Ice」をかけました。
オクターブやインターバルで音程を設定できるIceをかけました。ボーカルにかけると音の天井が広がり華やかさが増すような感じになり、さらにデュアルエンジンを活かして並列でOil Canを追加すると、柔らかさと広がりが加わえられます。

0:30:02〜

続いてシンセ・ドラムマシンの素材を試しました。
「OP-XY」のプリセットを使用し、「Lo-Fi」アルゴリズムを使いました。
ディレイタイムを最短(数ミリ秒)まで詰めるとビットクラッシャーのような質感になる特性を利用し、レコードノイズの付加やフィルターシェイプの変更を組み合わせることで、ローファイなビート感を作り出すデモが行われています。ディレイのモジュレーションを深くかけることでトレモロ的な効果やレズリースピーカーを思わせる回転感まで再現できる点も紹介されました。

0:46:20〜

配信では時間の問題で紹介できなかった、アコギでの活用例をこちらでご紹介

「DIGITAL」から「OIL CAN」に直列に組み合わせました。DIGITALをテンポディレイ的にリズムを増やすような設定にしつつ、OIL CANはディレイというより、リバーブのようなセッティングです。独特なナローなレンジ感のエフェクト音が加わることで、一般的なリバーブとは全く違う印象の残響を形作っています。

ちなみに

せっかくのデュアルディレイということで、2つのアルゴリズムを並び替えた時、音はどのように変わるのか、こちら実験してみたいと思います。

効果が分かりやすいように、OIL CANディレイ(A)と、ICEディレイ(B)の全く異なるキャラクターの二つを立ち上げました。

・Aだけ
こちらはオイル缶。まろやかで包み込むような暖かいサウンドです。もはやリバーブと聞き違うほどの絶妙な輪郭感がいいですね。

・Bだけ
こちらがICEですね。オクターブサウンドが混ざるので、どちらかと言えばギミック感のあるサウンドです。それでもちゃんと音楽的なサウンドなのがstrymonマジックですね。

・Aが先
オイル缶→ICEに直列。
特に最後のサステインに着目して頂きたいのですが、オイル缶のテールにICEのオクターブ効果が混ざる事で、コードの残響がストリングスのような、アンビエント系のシンセパッドのような風合いに変化しています。ICEだけの時も同様の変化はあるのですが、よりオーガニックな質感でGoodですね。

・Bが先
ICE→オイル缶に直列。
こちらはICEの効果がより柔らかな感じに変化していますね。
この事から、後に繋いだディレイのキャラクターがより支配的になる事が分かりますね。

・AとBが並列
こちらは並列なので、オイル缶とICEはそれぞれ影響せずにミックスされます。それぞれの個性がよりはっきりと出ます。直列と並列、それぞれ複雑なテクスチャーを作り出せますが、これは好みですね。ちなみに私はICE→オイル缶の「Bが先」パターンが好きでした。

ディレイ以外の音も試してみる

大前提としてTimeLine MXはディレイですが、設定によってはディレイ以外のエフェクトも再現できそうです。試してみましょう。

・リバーブ
こちらは設定の工夫云々ではなく「REVERB」というアルゴリズムが入っています。
リバーブタイムを最小〜最大まで5段階くらいで鳴らしてみました。
最大時はかなりの長さですね。綺麗で良いリバーブですね、、この余韻で曲を終わらせたい。

・コーラス
strymonの各ディレイのアルゴリズムの素晴らしさの要因の一つに「モジュレーション」があると思います。デジタルディレイ、オイル缶ディレイ、ドラムディレイ、テープディレイ、アナログディレイ…様々な方式のディレイがありますが、その機種を再現する際の音の揺れに絶妙な味付けがあります。
この絶妙な音の揺れ=「モジュレーション」をそのままコーラスとして使ってみるのも良さそうです。今回はディレイタイムとフィードバックを短めにして、DIGITALとdTapeでコーラスサウンドを作ってみました。それぞれ全く異なったキャラですが、良いサウンドですね。

・トレモロ
FILTERディレイにはトレモロ効果の設定もあります。
タイム短め、ミックス多めにしてみる事でトレモロとしても使えるか、試してみました。ディレイタイムがそこまで縮められないので、ショートディレイ感は多少残りますが、どうでしょうか?(LFOが5種類も入っているのは驚きですね)

・ロータリースピーカー
配信の中でSean氏も見せてくれましたが、LO-FIのモジュレーションとフィルター、その他サンプルレートやビットレートを駆使するとこんな音も。フィルターのおかげか図らずもロータリースピーカーらしい、マイクで収音した「ちょっと遠い感じ」を再現出来ているのが面白いです。

最後に

デュアルエンジン化と豊富なアルゴリズムを備え、ディレイという枠を超えたTimeLine MX。今回はギターでの基本的な使い方から、ボーカル、シンセ、ドラムマシン、アコースティックギターまで、さまざまな音源に実際にかけながらその可能性を探ってみました。

実際に触ってみて、まずサウンドの洗練度に感嘆しました。ワイドレンジでスタジオクオリティの安定したサウンド、なおかつ音源に違和感なく自然に馴染んでくれる。流石Strymonです。2つのアルゴリズムの思いがけない組み合わせや、並べ方から偶発的に面白い音が生まれるのも、TimeLine MXを触る楽しさのひとつではないでしょうか。

PC上で使えるプラグインのディレイも便利ですが、ハードウェアならではの操作感や、実際に機材同士を組み合わせながら音を探っていく過程には、プラグインとはまた違った面白さがあり、普段とまた違った角度からのインスピレーションを生み出してくれるかもしれません。

現在、Timeline MXは Rock oN Company 渋谷店にて展示中です。ぜひその魅力を実際に体験してみてください!

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ハラディ
ギターが好きです。機材については勉強中!最近は週末ハードオフ巡りしています。舟より馬派
記事内に掲載されている価格は 2026年9月07日 時点での価格となります
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