こんにちは。
「ドラムからシンセ、サウンドデザイン用コントローラーにシーケンサーまで、これ一台で」という触れ込みで、プリセットサウンド2,032、プリセットサンプラーサウンドが392搭載されていて、発売以来注目が集まっているYAMAHAのモバイル・オールインワンギア「SEQTRAK」。
こうしたモバイルギアというのは私個人としても古くから使っていて、特にYAMAHAのミュージックシーケンサー(QY70、QY100)は、自宅以外の場所で曲のアイディアを練ったりモバイルで場所を選ばず作曲・編曲のアイディアスケッチができるという利便性から大変重宝していました。
そんなYAMAHAからリリースされた最新型のモバイル・オールインワンギアということで、期待に胸を膨らませながら今回使用してみました。PCによるDAW全盛のこの時代、あえて登場したSEQTRAKでどのような音楽制作が可能なのか、今回はその主な機能をご紹介していきます。
SEQTRAKはDrums、Synth & Sampler、Sound Design & Effectsと、大きく3パートに分かれたユーザーインターフェースとなっていて、ハンズオンスタイルのリアルタイムコントローラーが瞬間的なサウンドスケッチを可能としています。ほかに外観については音色を表示したりシーケンストラックを表示する液晶ディスプレイがないことに気づきます。その分デザイン性に優れているのですが、慣れるまでは音楽制作の状況が把握しづらかったりします。そこで重宝するのがアプリでの作業になります。
SEQTRAKはUSBケーブルでPCに接続したり、Blluetooth経由でアプリに接続することで、音色のセレクトや直感的な操作が可能になります。慣れたら本体だけで操作できるようになれますがそれまではアプリで操作をすることで視認性が高まり、作業効率をアップすることができます。
ここでどのようにSEQTRAKで曲作りをしていくことができるのか、その概念を図と共に解説します。
SEQTRAKは1曲のデータを「プロジェクト」という単位で管理します。本体に8つ保存でき、そのうち1つを使用します。プロジェクトは11のトラックで構成され、各トラックに最大6つのパターンを作成できます(プロジェクトにはテンポや各トラックのボリュームといった設定や状態も含まれます)
「トラック」はプロジェクトを構成する要素で、ひとつのサウンドが割り当てられた演奏パートのことです。Drumトラック、Synthトラック(SYNTH 1・SYNTH 2・DX)、SAMPLERトラックの3種類があります。
「パターン」はループ再生されるフレーズのことです。各トラックにつき、最大6つのパターンから1つ選ぶことができます。同じフレーズを繰り返したり、好きなタイミングで切り替えたりすることで演奏できます。プロジェクトの再生が停止するまで、11トラック分のパターンが重なって鳴り続けます。
では実際にDrumトラックを打ち込んでみましょう。
Drumトラックは7つ(KICK・SNARE・CLAP・HAT 1・HAT 2・PERC 1・PERC 2)に対応するトラックノブやDrumキーを操作します。Drumキーによるステップ入力です。トラックノブを押してトラックを選択し、Drumキーを押すことで音を時間軸に沿って配置します。これにより簡単にビートを制作できます。
細かいところではステップの発音タイミングを微調整する(マイクロタイミング)ことが可能で、発音タイミングは、-60 ticks〜+58 ticksの範囲で調整可能です。
他にもステップの連打数を設定する(サブステップ)などが可能です。サブステップとは、オンのDrumキーを2秒以上長押しすると、5つのDrumキーが点灯し、サブステップを設定できる機能で、連打なし(デフォルト)、2連打、3連打(8分3連)[OS V1.10]、3連打、4連打から選択できます。
これらがあると単純なリズムパターンの打ち込みから、より生演奏に近いノリを生み出したり、アクセントのあるリズムパターンを生むことができます。
SEQTRAKは2種類のサウンドエンジンを搭載していて、一つがAWM2音源(最大同時発音数128音)で、こちらはピアノやストリングス、ギターといった生楽器サウンドの再現性に優れ、もう一つのFM音源(最大同時発音数8音/4オペレーター)は、シンセパッドやシンセリード、FMエレピといったサウンドを得意としています。これらはリアルタイムでもステップでも入力が可能です。
Synthトラックの操作はやはりスマホやPCを接続して、アプリによるエディットなどが視認性が高いので便利です。選択している音色やエディット画面がGUIで表示され、ボタンに追随して画面も切り替わるので大変便利です。
他にもクオンタイズのオン/オフ、オクターブ変更(+2オクターブ、-3オクターブの範囲)、スケール変更(8種類のスケールが保存)、キー変更、さらにはコード演奏なども可能です。
SAMPLERトラックがあることも大きな特徴で、SEQTRAKにはオリジナルのサンプルを仕込める7つのサウンドスロットが備わっています。
Synthキーを押すと、それぞれのSynthキーに割り当てられたサンプルが再生されます。Recordキーを押すと録音が開始、それぞれのSynthキーに割り当てられたサンプルを録音できます。
エフェクト部分が充実しているのもSEQTRAKの特徴です。トラックエフェクト・センドエフェクト・マスターエフェクトの3種類で構成されていて、エフェクトのパラメーターは、タッチスライダーで調整できます。(SEQTRAKアプリを使用すると、より細かく設定できます。)
このマスターエフェクトやHIGH PASS・REPEATERは、主にパフォーマンスで使用するためのエフェクトで、パラメーター調整時に、スライダーから指を離すと効果が切れます。入力した音を繰り返し再生するBEAT REPEATが設定されています。
Audio Inから外部音源を入力することも可能なので、そこでエフェクトをかけてみました。これを駆使すると2mixの音源を取り込んでリアルタイムでリミックスなどが簡単にできますね。
ここも従来のシーケンサーと大きく違うところだと思わせるVISUALIZER。アプリと連動させて使うのですが、った楽曲で魅力的な視覚体験を可能とするビジュアライザーが搭載されています。直接音楽制作の機能とは関係ありませんが、作動画投稿などが当たり前の今の時代、どんな機能で音と映像がリンクしていくのか気になります!そこで作った音にVISUALIZERの機能を試してみました。
VISUALIZERは3Dオブジェクトやビジュアルエフェクトに音に割り当てて、本体の演奏にリアルタイムに反応する映像を作成できる機能です。他にもスマートフォンのカメラを使って、リアル映像に重ねて3Dオブジェクトやビジュアルエフェクトを表示するARモーなどドもあります。
ライブパフォーマンスに使用したり、作成したビジュアルを録画して映像作品としてインターネットなどで公開したりできます。自分の作成した音楽に合わせて瞬時に凝った映像を作ることができるのは画期的ですね。
SEQTRAKを使っていて初めてシーケンサーで音楽制作を始めた頃を思い出しました。ハードウェアでリズムを組んだり音を重ねていくことで曲を作り上げていく面白さ、音色をセレクトしたり、エフェクトをリアルタイムでかけていくことで偶発的に生まれる効果を楽しむことができるので、音楽制作の極めて原体験的な醍醐味が味わえる製品です。
特にスマホに慣れた若い世代の方ならアプリでの方がPCより慣れていますし、音楽制作だけでなくVISUALIZERを駆使して映像も作ることができるといった意味ではSEQTRAKは極めて時代の流れにマッチした、現代的なモバイル・オールインワンギアであると言えます。
豊富な音色によるシンセサイザーとサンプラー機能、さらに多彩なエフェクトを駆使した音作りでビギナーにもわかりやすく直感的なパフォーマンスが楽しめるSEQTRAK。ぜひこのモバイルギアを使って、この春から音楽制作を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Writer.サチュレート宮崎