パラダイス

瀬川商店 第39回:AIと共存する時代かな

2025.07.18

Tipsではないけど、劇伴業界に於いても当然AIは無視できないわけでして。現状で僕がどのように?どの程度?AIを使っているのか今日現在の事を書いてみたいと思う。

まず、プログラミングはかなり助けてもらってる。ほんとはLua言語絡みの(特にKontaktね)プログラムを手伝ってもらえるといいんだけど、2025年7月16日の今日現在は、一発で完璧にコーディングしてくれる状況ではないね。それでも、間違ってる行を指摘してもらうのは秒でやってくれるし、ユーザーにKSPの知識があれば割と使えるところまでは来てる。

Kontaktのスクリプト画面

それから先々週紹介したDAW「Reaper」内で使ってるLua以外のPython言語とちょっとJava言語に関してはかなりの精度でコーディングしてくれる。まっさらな状態からコードを書いてもらうよりも、自分に似た機能に近いスクリプト(例えばテンポに関するスクリプトが必要であれば、テンポ管理や、拍数等の割り出しに関係するスクリプトを一旦AIに理解させたのちに、その修正をお願いするような流れにすれとかなりの精度で書き出しくれる。それから、過去に自分で書いたReaper用のスクリプトの見直しはほんとに助かる。ほんとに、体感的に”秒で改訂”してくれる感じ。先日も10年前に独学で1週間も悶々と英語の資料を読みながら書いたスクリプトの修正を頼んだら、数秒でもっとスマートに、30行も短く、的確なコメントも込みで書き出してくれて、喜んでいいのか泣いたらいいのかよく感情になった(汗)

スクリプトを活用することで作業の効率化を図れるDAWソフト「Reaper」

次に創作的なことではないけど、デモを書き出したあとに、mp3をスタッフと共有している特定のDropboxフォルダにアップすると、そのプロジェクトを管理しているGoogle Sheetsにmp3のファイル名から、Mナンバー、トラックのタイトル、そのトラックの尺を吸い出して自動的にセルを埋めてくれるようになった。そして、同じくスタッフと共有しているSlackの特定のチャンネルに「M34 Slow and Fastをアップしました。よろしく!」と自動的に書きこんでくれる。これはAPIを叩いて操作するか、Zapierのオペレーションサービスを使うかの2択あるんだけど、今現在どっちが安上がりか試験中って感じ。

皆んな大好きNotebook LMも日本語対応する前から使ってたけど、やっぱり4月30日に突如40言語(だったかな?)に対応したことで俄然使いやすくなったので、モジュラーシンセの英語マニュアルを解析させたり、1時間以上あるYouTube上のアトモスミックスに関してのチュートリアル動画を解析して、自分が知らないトピックを含んでいるかどうかを確認してから、マインドマップで興味のある箇所に飛んで勉強したりする事が多くなった。

AIが作曲するサービスは周囲の人から勝手に色々情報が入ってくるので(笑)、自分では掘りに行ってない。すごいなと思うけど、劇伴の仕事って監督やミュージックエディターとのやりとりが大事で、その上でカスタムメイドで毎回曲を制作するってスタイルはもうしばらくは変わらないだろうから、それほど仕事とられる心配はしていない。ただ僕も昔CMの仕事をかなりやってたけど、CMの仕事に関してはAIに職を奪われる可能性はある、、、かもね〜

話がそれるけど、「これってAIかな〜?」という曲はオーディオをLogic Xに読み込んで、Logic Xの「STEM Splitter」という2ミックスのオーディオ素材から、ボーカル、ギター、ベース、キーボード等をステムに書き出してくれる機能があるんだけど、そのステム状態にして聴いてみるとAIが作った曲のリバーブってなんか不自然なんだよね。ボーカルのステムを聴くと顕著なんだけど、そうやって「うわ、これAIなんだ〜どういうスクリプトで書かせてるんだろ〜」みたいなチェックはしている(笑)

WAVESのILLUGENは面白い。特に不思議なパーカッションのループを作らせる事に関してはかなり新鮮に感じる。幸い、海外のCMの仕事やLAで経験した、音楽を表現するための用語の知識がかなり役にたっている。英語で抽象的な音楽のニュアンスを書くのはちょっと大変だけど、まあそれもAIに考えてもらえばいいしね。

本国Waves.comで提供されているテキストからサウンドを生成するツールILLUGEN。

とあるエフェクター(Stomp Boxね)の基盤の写真を解析させて、使っているパーツ(一部は僕が抵抗値測って入力したけど)から回路図を想定して、さらにそこから手に入るパーツで最善の改訂案を提示してくれた時もかなりビビったね。まあギターに使うエフェクターって事である程度予想はできるのかも知れないけど、それでもね、びっくりしますよ、、、

と、こう書き出してみるとなんだかんだ毎日使ってるね。日々新しい局面が生まれてくるからその都度アップデートする方が結果的に楽だと思うけど、時々AIとのやりとりをSNSにアップしている人たちがいて、随分カジュアルな会話形式でやりとりしてるんだなと思うけど、僕の経験上でもそうだし、統計的にも丁寧な言葉遣いでAIとやり取りした方が生成される結果のクオリティーは高いよね。実は一昨年の11月には僕はそれに気づいていたのだ、フフフ。なので、AIから「それって◯◯じゃん!」的なカジュアルさで入力する事も、やり取りされる事もないんですよ。

それから、今現在でも(少なくともChatGPTは)基本英語で考えてるから、例え日本語でプロンプト書くにしても、冠詞、数詞に関しては割と明確にしてる。とにかくAI側にブレの積み重ねみたいな負担かけることでハレーションが起こるのは確かだからね。

と言うものの、あっという間にそういう気遣いみたいなものは必要にならなくなるんだろうね。

色々心配な事もあるけど、プログラミング等を独学で学んだ僕にとっては力強い味方であるのは確かだし、この前もChatGPTにQuaternionに関してかなり初心者的なところからしっかり教えてもらった。AI相手だと恥ずかしい思いをせずに、何度も何度も質問を繰り返して勉強できっていうのは本当にいい時代だと思う。

でも来年の今日は果たしてどうなってるかな?

瀬川英史(瀬川商店)
劇伴の作曲家やってます。Netflix「シティーハンター」アニメ「烏は主を選ばない」等。シンセは危険物取扱者の甲種レベルの知識あり(多分)。
記事内に掲載されている価格は 2025年7月18日 時点での価格となります
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