劇伴作曲家でもテンプレートを使わないという人もいますが、今回は僕のテンプレートのトラックの呼び出しに関する部分を紹介します。
僕はSteinberg社のNuendoを使う場面がとても多いので今回もNuendoの話が中心になりますが今回の内容はCubase Proも共通です。
僕は現在WindowsとMacの二つの環境を持っていて、Windows(以下Win)はOMファクトリーに組んでもらったマシンで、Macは昨年リリースされたM4 MackBookPro(以下MBP)です。
僕のテンプレートには1200トラックくらい(MBPは少し整理して900弱かな)が既にインアクティブ状態で用意されていて、その都度必要なトラックを呼び出してアクティブにしてモックアップ作業していくんです。なんだかんだ自分で作ったKontaktのパッチもあったり、年に数回しか使わないライブラリーもあるんですけど、テンプレートにのせておかないと”探す”作業を強いられるのですが、この”探す”が性に合わないんですね。それでトラック数が多くなります。
このテンプレートが可能になったのはやはりm.2のSSDの出現とPCのメモリーが安くなった事が大きいですね。Winマシンのメモリーは256GB積んでいます。MBPは128GBです。劇伴はやっぱりサンプリングライブラリー中心の作業になるのでメモリーはあればあっただけ良いですね。LAに住んでいたころPCに512GBのメモリーを積んでいた猛者がいましたが、LAは元Microsoftとか、フリーランスのPCテック(機材の中でも特にPCの組み込みやアップデート等のメンテナンスサービスを専門にしている人)がとにかくたくさんいるので、通常512GBのメモリーを買うのは簡単(?)だけど、メモリーのペアやクワッドでマッチングさせなければいけないので、かなり専門的な知識が必要になります。でもLAはそんなテックの人達がメディアコンポーザーやプロダクションスタジオを陰で支えている街なんですね。例えば、メモリーコントロールをBIOSで微調整するとか興味がないわけではないですが、、、積極的にやりたくはないですしね(笑)
次にトラックの検索の仕方ですが、僕のテンプレートに用意されている全てのトラックにハッシュタグがついています。例えば木管は#WD、金管は#BRS、エピックパーカッションは数が多いので#EPIC1、#EPIC2、#EPIC3と3つあって、それぞれ別のステムにアサインされてもいます。
NuendoはトラックネームでHide状態のトラックでも検索ができるので、⌘+Fでこれらのハッシュタグを入力して、使いたいトラックをみつけてアクティブにします。テンプレに内包するトラックが1000近くあっても、楽器や奏法で分けていくと検索に該当するトラック数はそれほどの数でもないんです。Nuendoだと選択したトラックをアクティブにしたりインアクティブにするのは同一のショートカットで可能なので、使いたいトラックを僕の場合はキーボードの”e”キーを叩いて。アクティブにしたりインアクティブします。
他の呼び出し方として(日常的に頻繁に使用するのはこちら)、Project Logical Editorのスクリプトを作成してShowとHideのProject Logical Editorのショートカットを使って表に出したり、裏に隠したりします。例えばStringsのスピカートであれば、「#SPICC」がトラックネームに含まれているので、以下のプリセットで表に出したり、裏に隠したりします。
この方法でスピカートのライブラリーがのっているトラックを呼び出して、MIDIデータをレコーディングしたり、空のMIDIリージョンを作ったあとに、Nuendoのデフォルトの機能である「使用していないトラックは非表示」を使って、必要のないトラックはまた隠すわけです。基本これの繰り返しで作業を進めます。
M.2のSSDを使うと(起動する音源にもよりますが)メモリーの少ないスタッカートやピチカートのトラックならば、音が出せる状態になるまで5秒もかかりません。いい時代ですね。
さて、ただハッシュタグが増えていくとそのショートカットをどこにアサインするか(または記憶力の問題とも言える)の問題が出てきます。僕はそれをメインマシンとは別のWindows NUC(安いものだと3万円くらいでもあるかな)で以下のリンクのOSCを使ってマニュピレートしています。このOSC本当に素晴らしいアプリなのになんと無料!ありがた〜い!そして、OSCを操作するタッチスクリーンも最近は18インチで3万円前後で手に入りますから本当にいい時代ですね。OSCの操作でマルチタッチする場面は頻繁にはないですが、WindowsであればOS側でマルチタッチもサポートしているし、なにより安いですw
OSCは自分でプログラミングしますが、基本Nuendo側へ送信するのはほぼほぼMIDI情報なので、一つのボタンの作り方を覚えたらあとは基本それの複製ですね。以下が僕のOSCで使用している初期画面です。これとフィジカルに記憶しているショートカットを併用すれば滞りなく毎日仕事できます。ハープのペダル設定や、U-heのソフトシンセで使用するXYパッド等はボタンを押してさらに別ページを開いて作業を続けます。OSCに関しては次回にもう少し触れますね。