前回はバスドラをピックアップする2個のマイクロフォンの時間軸と位相の考え方を書きましたが、実際に現場ではどのような機材を使っているのか!?
手順なども含めて書いてみます。

前回と重複しますが、まず①のバウンダリーマイクロフォンと、②のバスドラの外のマイクロフォンの時間を合わせます。①のバウンダリーマイクロフォンのコンソールチャンネルでインプットディレイを遅らせます。

バスドラの奥行きは標準で16インチ、1インチが2,54cmですので約40cmになります。バウンダリーマイクロフォンと外に立てたマイクロフォンの距離は約34cm前後で考えますと
時間=距離 ÷ 音速340(m/秒)
の計算式を使い1msecになります。コンソールのインプットディレイで 0mse より動かして1msec前後で考えます。

①のバウンダリーマイクロフォンの指向性に関しては、第11回で話したように半指向性になります。
②のマイクロフォンは、単一指向性でバスドラのペダルに向かって正面になります。
2つのマイクロフォンはバスドラのペダルに向かって指向性が違うので、ミックスをすると低音の音量感が少なくなったりアタック感が無くなる事があります。これは位相が合っていない原因であります。

各社コンソールには、各インプットチャンネルに位相反転スイッチがありますので、バウンダリーマイクロフォンとバスドラの外に立てたマイクのミキシングタイミングで、バウンダリーマイクロフォンの位相スイッチを反転してください。
低音の押し出しが増えたり、アタック感が増えれば位相が正しい事になります。各バスドラの奥行きや、大きさ、チューニングによって位相設定はまちまちであります。位相スイッチを何回か変えてみて効果のある方に設定してください。
ここまで説明した事をアウトボード(コンソールの外にて機能拡張された機器)を使って調整する機材を紹介します。僕はUniversal Audioのapolloを使っています。
Universal Audio Apolloシリーズ(Rack系)

この製品を発売当初から使っていまして、コンサート現場には必ず持って行きます。この製品に関しての詳細は今後に書きますが、魅力を箇条書きにしますと。
*まず基本的に製品の音が良い
*アナログ時代の名機がパソコン上にてUAD プラグインで使用出来ます

※Little Labs IBP Phase Alignment Toolは、対応ハードウェアと組み合わせて使用するUADプラグイン。ApolloのUltimate+ Edition等を除き通常別売りとなります(26年1月23日現在)。詳細はメーカー/代理店のApollo付属プラグインの情報をご確認くださいませ。
まず、バウンダリーマイクロフォンのチャンネルにLittle Labs IBP Phase Alignment をインサートします。基本的なバウンダリーマイクロフォンとバスドラの外にあるマイクロフォンのレベルやイコライザー(音色補正)を行って、その2本のフェーダーバランスを作ります。そこからLittle Labs IBP Phase Alignmentを調整します。
①のdelay adjustつまみを右一杯の4msecまで動かすと明らかに、アタック感が変わります。
4msec遅らせると、バスドラの外にあるマイクロフォンの後にアタックを感じるので違和感があります。
そこからゆっくり、0msecに向けて動かすとアタック感がバスドラの外にあるマイクロフォンと一致するつまみ位置に設定します。
良きつまみ位置を記憶して、その前後に動かして一番感覚的にサウンド感の良い位置に固定します。
次に②のphase adjust (位相)のつまみを右一杯に回します。これは正相から逆相になりますので、低音の押し出しや、アタック感が変わります。そこからゆっくり正相に戻して行き低音もアタック感もバスドラの外のマイクロフォンと位相が一致するつまみ位置を記憶します。
そのつまみ位置の前後に動かして一番感覚的にサウンド感の良いツマミ位置に固定します。
③のスイッチはこのプラグインのpower(電源)です。On /Offをしますと、このプラグイン設定の効果が分かります。
このスイッチは物理スイッチでは無いので、ノイズは発生しませんので安心してください。
この手順で素晴らしいバスドラサウンドを作る事が出来ます。
その他のスイッチ青文字の説明をします!
④のスイッチは、①のdelay adjustのバイパスです。
⑤のスイッチは、②のphase adjust のバイパスです。
⑥のスイッチは、phase invert 逆相スイッチになります。
⑦のスイッチは、②のphase adjust を逆相(180度)から90度の範囲にしますので、位相が90度以内ならより精度の高い設定が可能になります。
⑧のスイッチは、②のphase adjust をlo(低音)hi(高音)で合わせるのか変更できます。
デジタル機器を使用する時の注意点としては、デジタル処理をする為に時間遅延(レーテンシー)が発生します。ですので、バスドラの外のマイクにもapolloをチャンネルインサートをして両チャンネルの時間を揃える事が必要になります。とても優秀なデジタル機器は沢山ありますが、時間遅延(レーテンシー)の事を考えて使用しなければいけません。
コンサートのサウンドチェックは時間に余裕が無いので手際良く設定を決める事が求められます。ドラマーの方はサウンドエンジニアが音作りをする間、ずーっとバスドラを踏むわけですから少しでも体力消耗をしないように気を遣う” 思いやり “が大切です。現場に入る前に、各パラメーターの意味を理解しましょう!!
次回はスネアのマイクロフォンについて書きます。
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