パラダイス

Erica Synths 本社取材(後編)

2026.05.20

みなさんこんにちは!ACID渋谷です。Erica Synths 本社取材(後編)はいよいよ創設者Girts Ozolinsさんご本人のインタビューになります!それではどうぞ。
Erica Synths 本社取材(前編)はこちら


Girts Ozolins氏(以下Girts): 私は当時のソ連時代の小さな村に住んでいました。あの時代は何というか人々は「個人」としてではなく「群衆」として扱われ、普通ならトラクターの運転手か建設作業員になるような環境でしたね。

私はもともと科学と発明に興味があったので、ラジオの受信機を作ったりDIYの電子工作をやっていて、その後どういうわけか電子楽器に行き着き、アンプやペダルを作りました。中学時代には手作りの楽器でパンクバンドを組み、一度だけライブもしました。その後ソ連が崩壊し、趣味をやめて大学で学び、理数系の教師になりました。4年後に広告代理店に入り、最終的に10年間CEOを務めました。

2011年頃に再び電子楽器工作の趣味を再開し、モジュラーシンセを作り始めました。そして2014年にはこれがビジネスになると気づき、2015年に3人でErica Synthsを立ち上げたんです。今は10人です。音楽は科学(物理学)と芸術を結びつけるもので、とても魅力的だと思っています。 

Girts: 自作のディストーションペダルを繋いだベースギターです。クラシックロックを聴いていましたが、セックス・ピストルズを聴いて衝撃を受けました。 

圧巻のモジュラーウォール。

Girts: それは誤解ですね(笑)。当時(2015年頃)はモジュラーシンセのパネルと言えばシルバーが標準でしたが、我々は品質と伝統の証として初めて黒いパネルを採用しました。過激さを狙ったわけではありません。私たちの哲学は、マニュアルを読まなくても楽しく演奏できる、直感的なインターフェースを作ることです。かつてVSTプラグインを開発して利益を出したこともありましたが、ソフトウェアには感情的な繋がりが持てないと気づきました。人間をロボットやAIと区別するのは「パフォーマンス」であり、だからこそ私たちはハードウェアを信じています。 

Erica SynthsメンバーのKODEK氏はアーティストとしても活躍。ハードウェアを駆使したアグレッシヴなパフォーマンスが魅力だ。

Girts: ドラムマシンのPērkonsは、インテリアデザイナーのアイデアで最初は「戦闘機のコックピットブルー」に塗られていました。しかし、製造においてこの色は非常に難しく、2週間もするとシルクスクリーンが剥がれてしまったんです。多くのお金を失い、黒に変更せざるを得ませんでした。記念として、このビルの舗装に青いPērkonsを一つ埋め込んでいます。 

Pērkonsのプロトタイプ。右側のジョイスティックなど製品版とは微妙に異なる仕様になっている。

Girts: ユーロラックの世界では、ユーザーのラックのスペースは限られています。私は広告業界にいた時、日用品のマーケティングで「いかに棚のスペースを占有するか」を学びました。だからこそ、Blackシリーズ、Picoシリーズ、Drumシリーズの3つを同時に開発しました。私たちは10人のフラットな組織で、競合よりはるかに良いものが作れると確信した時だけ製品を作ります。 

精悍なブラック。Perkonsは存在した3種類全てのカラーがかっこいい。

Girts: 目的次第ですね。例えばPērkonsはデジタルボイスエンジンですが、フィルターやオーバードライブ、ミキサーはアナログというハイブリッド構造です。もちろん失敗することもあります。フルアナログのキックドラムシンセのプロトタイプを作った際、ツマミの位置(音)を正確に保存・再現できないことに気づき、プリセットを保存できるようにデジタル制御でゼロから再設計しなければなりませんでした。 

はて、これは?オフィス内では様々なプロトタイプを見せてくれた。

Girts: 人間の人生の意味は、次の世代に知識を伝えることだと信じています。私が教師だった理由もそれです。音楽技術を学ぶ「Bullfrog」や、電子回路設計を学ぶ「mki x es.EDU」キットを展開しています。電子音楽の文化を広め、クラシックの作曲家にもシンセサイザーのための曲を書いてほしいと思っています。 

Erica SynthsとテクノアーティストRichie HawtinのコラボレーションモデルBullfrog。シンセサイジングの基礎から応用までを学ぶことが出来る。サウンドも太くエッジが立っている。
mki x es.EDU DIY System。Erica SynthsとMoritz Klein Instrumentsがタッグを組んで開発している。

Girts: 友人からもらったスワロフスキークリスタルのキーホルダーのデザインが元なんです。それを元同僚がロゴにしてくれました。

勝手にグレイタイプの宇宙人がモデルかと思っていました。

Girts: Tunaは今10歳で私の家に住んでいますが、犬みたいな性格でバイクが大好きなんです。 

TUNA The Cat。たくさんグッズが出ているのでぜひチェックを。

Girts: そうですね。全部が好きなので選べません。Erica SynthsのベストセラーはPērkonsやNightverbなどのFXモジュールです。新作のBullfrog Drumsも誇りに思っています。

最近のデスクトップエフェクター群。英国人気レーベルNINJA TUNEとのコラボレーションモデルZEN DELAYなどユニークかつ豊富なラインナップを誇る。
SUPERBOOTH26と合わせて発売されたBullfrog Drumsとミキサーのプロトタイプ。

他社では、創業時から全くブレないElektronや、クレイジーな機械工学を取り入れるGamechanger Audioを高く評価しています。

ご存知ELEKTRON。ELEKTRONのオフィス訪問記事はこちら。
MOTORSYNTHなどユニークなプロダクトを生み出すGamechanger Audio。Erica Synthsと同じラトビアのメーカーだ。

また、モノづくりの美学という点では、私はバイクの方が好きですね。YamahaのMT-01のように、巨大なクルーザーのエンジンをストリートファイターに積むような、クレイジーなリスクを取る姿勢が好きです。「できるからやるんだ」というメーカーを尊敬しています。 

YAMAHA MT-01。ストリートファイターとはフルカウルを装備したスーパースポーツ(SS)のエンジンや足回りを受け継ぎながら、カウルを取り払ってネイキッド仕様にしたバイク(のようです)。

Girts: 10人のチームのまま、物流などを自動化して会社を成長させたいです。キーボード付きのシンセも開発中です。日本は本当にインスピレーションの源です。『Tokyo Festival of Modular』に行くと、ハーシュノイズからエクスペリメンタルまで、他にはないほど多様な音楽に触れられます。そして、大阪の「太陽の塔」を作ったチームにはポジティブな嫉妬を覚えます。あんなものを作れるなんて、どれだけXSXをやったんだと驚くほど(笑)、強烈にインスパイアされました。

Girtsさんを嫉妬させた太陽の塔の内部。やはり生命の樹には圧倒されます。

いかがでしたでしょうか?Girtsさんは異色の経歴を持ち、バイクを愛し、次世代への知識の継承を重んじる、非常にポジティブでクリエイティブな人でした。私がますますErica Synthsを好きになったのは言うまでもありません。ユニークなプロダクトを生み出し続けるErica Synthsに今後も期待しましょう!

ありがとうございました!

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古今東西のシンセ情報を掘り下げます。シンセ系メーカーのインタビューも敢行予定!
記事内に掲載されている価格は 2026年5月20日 時点での価格となります