昨年国内展開が開始されたMusik Hack 『Master Plan』。
リリース当初に話題を呼んだ本製品ですが、今回はその魅力について掘り下げていきます!
ご存知の方もいらっしゃるかとは思いますが、
Musik Hack 『Master Plan』はシンプルな操作感ながらクリアに音圧を引き上げる事のできる、オールインワンタイプのマスタリング用プラグインになります。
創造性を損なわずに「耳で聴く」マスタリングを最適化したとの事で、どうやらこの部分が製品の大きな特徴になりそうです。
オールインワン系のプラグインは他社ですとiZotopeの『Ozone』やbrainworx『bx_masterdeskシリーズ』などがありますが、
本製品はそれらと比べるとどのような点でメリットがあるでしょうか。
私はOzoneとbx_masterdesk Proを所持しておりますので、
比較しながら製品の魅力に迫っていきたいと思います!
早速概要を掴む為、全体を見ていきましょう。
中央の大きな”Loud”ノブを上げると音圧が上がります。
このノブは歪みの少ないクリアなサウンドの為に、リミッターとクリッパーを組み合わせた機能を有しているようで、入力信号によって自動で切り替える挙動をしているそうです。
画面下部のLUFSメーターを見ながら、値を調整する形ですね。
そして左右にはEQセクションと、”Wide”ノブがあります。
“Wide”ノブはステレオイメージャーとエンハンサーが合わさった様な動きです。多めに上げても嫌な分離感は少なく、位相が保たれており使いやすいです。
上記3つがメインのセクションですが、その他下記のボタンが付いていますので、機能をざっくり説明します。
Thick: アナログサチュレーションの追加
Clean: 低域のレゾナンスカット
Multi: マルチバンドコンプレッサー
Smooth: Glueコンプレッサーの様な動きで、ミックスにまとまりを与える
Calm: 高域のレゾナンスカット
Tape: アナログテープの質感を付与する
各ボタンの下には適用具合を調整できるスライダーが付いています。
こちらも直観的に触っていける作りになっていますが、基本的にはサウンドに物足りなさを感じた時や、問題が生じた時などに使用するのが良さそうです。
他に、下部にはLUFSとレベルメーター、ピークレベルなどの情報。プリセット名の記載があります。
右上側にはUnityボタンがあり、エフェクト適用前後の音量変化を揃える事で、音量に惑わされない正確なモニタリングが可能です。
さて説明は一旦この程度にして、早速使用してみましょう。
今回用意した音源はこちら。
早速音源にMasterPlanを適用してみましょう!
プリセットの使い勝手が良く、最初にプリセットを選択してから耳で確認をしながら調整する流れが良さそうです。
今回はプリセットの「Balanced」を元に調整を行いました。
操作可能な部分が多くないので、グリグリ弄りながら編集していけるのが気持ちいいですね。
サウンドはこのようになりました!
この時点で大分違いを実感しているのですが、
一旦温めておいて、個人的に使うことの多いOzoneとbx_masterdesk Proを使ったバージョンも作ってみましょう。
ご存知の方も多いであろうiZotope社のマスタリングプラグインです。
こちらもAI機能の搭載で使いやすいプラグインですが、MasterPlanと比べるとかなり多機能で、積極的に音を変化させる事もできる点がポイント。
今回使用したのはOzone 11 Advancedになります。
masterplanと比べるとかなり差があるのがわかりますね!
詰めていくと結構じっくり触ることになるので、適宜Bypassで効果を確認しながら調整しました。
こちらはPlugin Allianceのマスタリングプラグインで、同じくオールインワン系になります。
AI制御などはないですが、やや簡略化された作りで操作性も良いプラグインです。
あまり極端ではないですが、やや「通すだけで音が変わる」系の傾向があり、パンチのあるキャラクターはこのプラグインの特徴でもあります。
いかがでしょうか。3つのプラグイン、どれも違うサウンドを持っているのが分かるかと思います。
私の方でまず気づいたのは、「Master Plan」の透明性の高さ。
特にOzoneは積極的に音を変える事もできるので方向性の違いはありますが、「Master Plan」はかなり自然に音圧が上がっているように聞こえます。
(Ozoneやbx_masterdesk Proはよく使っていると、このプラグインの音だな〜というのがうっすら分かってきます。)
大きく音圧を上げていくと歪みやサウンドが平坦になったりと、色々と弊害が出てきやすいですが、元の音のキャラクターが保てるのは大きなメリットになりますね!
UIはシンプルですが複雑なプロセスが内部で走っているものと思われます。
「Master Plan」はあくまでもラウドネス増加を主な目的とした作りになっており、細かな調整として各種ボタンを使用する使い方になります。
その為ある程度ミックスで方向性が定まっている段階で使用する流れになりますが、各パラメータをどんどん触っていってもサウンドが破綻する事があまりないため、正に「耳で聴きながら」感覚的にサウンドを作っていける点がこの製品の真骨頂です。
メーカーの方のインタビュー記事では、”「テクニカルな目標」や「数値上の正解」を重視するよりも、実際に自分の耳で「トラックを聴くこと」を奨励しています” との発言があり、”作品を良い音楽にするためには、「正しいサウンドがどんなものか」という感覚を養うことが非常に重要” であり、聴いて “良い音であればOK” という発言が印象的です。
シンプルな操作感からビギナーの方にもお勧めではありますが、決して簡易的な製品ではなくしっかりとプロユースを想定されている製品です。
3製品ともステレオ幅の調整をする事が出来るので、ちょっと気になって実験してみました。試しにステレオ幅をMAXにして比較をしてみたのですが、
ほか2製品に比べMaster Planは単純に幅が広がっている印象で、位相も保たれており自然な仕上がり。派手さはないですが、このプラグインの方向性に合った作りになっていると思います。
Musik Hack 『Master Plan』は、ラウドネス増加に伴い生じる様々な問題を回避しやすく効果を適用できるプラグインです。
簡単な操作感ながら必要な機能は十分に備えているので、
マスタリングで積極的に使っていける、便利さと機能面を両立したプラグインになっています。
・透明性の高いクリッパー/リミッターを探している方
・感覚的にマスタリングを進めたい方
・今までのマスタリングのフローを変えたい方
など、アマチュア、プロフェッショナル問わずおすすめできる製品です!