皆様こんにちは!!梅田店長 ファジー日下部です!
昨今レコーディングやライブシーンでもアンプシミュレーターが多く使われ、もはや主流となりつつあります。
自宅で100Wのアンプなんて鳴らせるか!という住宅事情やリテイク時のリコール性など、現代の制作環境ではシミュレーターの方が汎用性が高い部分は確かにあるのですが、よくよく考えてみれば結局皆様がリファレンスにしてる音源や商業音楽で収録されているギターって結局エアー録りしてる物を聴いてること多くないです?
というか僕自身も拙いながらエレキギターを嗜むのですが、あなたの弾いてるそのアンシュミのパッチって「どんなプレイヤーがどんな音を目指して、どんな竿で、どのピックアップで作った音ですか?」って思うようになってきました。
どれだけアンプシミュレーターの音がリアルになってきたと言っても、ギターの音色を、右手やボリュームコントロールで変化させたいと思うようになった時に、やはりアナログアンプのレスポンスには勝てないのです。。。
あとは個人的な意見ではありますが、絶対にエアー録りをこだわった方がトラックに愛着が出るし、ちゃんと楽曲内でのギターの役割を意識してマイクやマイキングを選んで音を作っていくので結果、”良い音”になりやすいと思っております。
特にギターはパーカッションチックに鳴らしてみたり、ズンズン刻んでみたりと使い方も自由に音作りを出来るのが楽しい楽器ですので、ライン録りも良いですか曲によってはエアー録りもやってみましょう!
どっちも出来る上で作るラインのサウンドはまた一味違うんですよねうんうん。
ということで今回はレコーディングエンジニアでの現場経験があるROCK ON PRO / Product Specialist 前田洋介 が梅田店にてギターレコーディングのイロハをファジー日下部と監督長島にレクチャー!
その様子、内容をお伝えいたします!
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
“人類全員ファズ踏めばハッピー”をモットーにギターを弾いてますがマイクプリはクリーン系が好きです。
野球は全くわかりませんが、サンプリングが得意です。自然とたわむれフィールドレコーディング好む
まず第一にマイクを選びまs・・・・・・ではなく、アンプをよく観察します。
一番最初にアンプで今回想定した音を作りましょう。
出音が良くないと録り音が良くなるわけがありません。
ぶっちゃけここでどれだけ狙ったサウンドが鳴らせるかでプレイも変わりますし、ナイステイクを出すこと以上に録り音を良くする方法はありません。
今回使用するアンプは ORANGE / Rocker 30 Combo というファジー日下部お気に入りのアンプです。
12インチのCelestion Vintage 30スピーカーを搭載したオープンバック、1発キャビのコンボアンプです。
オープンバックですので裏からも音が出ているので壁からの距離などによってもサウンドが変わるのが特徴です。
余談ですが早速応用のような話をすると、エンジニアによってはロー用に裏にマイクを立てることもあるそうです。
今回はRock oN Umeda / Unlimited Studioにて収録します。
このアンプをこの部屋のどこで鳴らすと一番気持ちいいサウンドになるかをチェックします!
低音の減衰具合や倍音の出方などを壁からの距離ごとや向きによってのサウンドの違いをオーディションしてみます。
今回は床に直置きなのですが、スタンドやインシュレーターを挟んでみたりしてもローの出方が大きく変わって面白いです!
さて、アンプの位置が決まったら次はスピーカーの位置を確認!
ギター録音ではマイクの種類の他、マイクを立てる位置によって音が変化します。
ORANGE / Rocker 30 Combo は1発キャビですが、2発、4発キャビでは一番鳴りの良いスピーカーを探します。
特に上下については床からの距離が変わるので変化が顕著に表れます。
ORANGE / Rocker 30 Comboでもスピーカーは1つなのですが今回は垂直方向と斜め方向でローの出方が全然違います。
特にこのアンプは聴いた感じ下向きに音が出ている印象がありますね。
1発キャビだから余計にローを出す為の工夫かもしれません。
さぁ録音するスピーカーが決まったら次はスピーカーに対しての位置極めです!
スピーカーに対してマイクを立てる位置のポイントはいくつかあります。
センター(中心)の位置
ボイスコイルの位置
ダンパー(縁)位置
ボイスコイルとダンパーの半分の位置
ボイスコイルとダンパーの1/3の位置
まずはこれらの位置に立ててみましょう!
今回はそれぞれの垂直方向に加え、斜め方向も収録してみました。
(垂直)センター位置
(垂直)ボイスコイル位置
(垂直)1/3位置
(垂直)半分位置
(垂直)ダンパー位置
(斜め)1/3位置
(斜め)半分位置
(斜め)ダンパー位置
またマイクはギター録音の定番 SHURE / SM57 を使用しています。
インターフェイスはAntelope Discrete 8 SynergyCore PRO、DAWはPro tools Ultimateにて収録してます。
1 センターでは倍音が目立つ繊細なサウンド・・・なはずなのですが、このRocker 30 Comboはどセンターにメーカーロゴのプレートが鎮座しキャビに対して垂直に立てる場合どうしても遮蔽物の関係上今回は使えなさそうです。。。
本来は、センター位置では少しピーキーではあるものの、複数本のマイキングや低域が持ち上がった周波数特性をもつマイクでは相性が良いサウンドになり、特にハイゲインではエンハンス的な役割で使用できたりします。
2 ボイスコイルはスピーカーを動かす位置であるだけに、やはりアタックが際立つレスポンスの良いサウンドが特徴です。
軽やかなカッティングや指弾きなどのキレや緩急を録りたい時は活躍しそうです!
3 ①,②と比べミッド帯域がグッと前に出て来ており、リードギターの芯を捉えたサウンドですね。ギター特有の倍音は残しつつ厚みや立体感が出てきてます。汎用性高いバランスの取れたサウンドですので悩んだら一旦ここに立ててから微調整して探し出しても良いんじゃないでしょうか。
4 ③とマイク1本分くらいしか違わないのにサウンドはかなり変化しますよね!③と比べるともっとローミッドの芯を捉え、安直な表現だと③を太くしたような印象です。
ボーカルとのアイソレーションを気にしなくて良いギターソロを録るなら③より④の方がガツンと半歩前でパワーがあるサウンドになってくれそうです。
5 ダンパー位置ではかなりローがふくよかになり太いサウンドになりましたね。
垂直位置では床に近いということもあり少し輪郭はぼやけて鼻声のようになってしまっているような印象です。
センターやボイスコイル位置と併用してサブ的に使用する想定であれば厚みを足せそうですね。
6 斜め方向にずらすだけでそんなに変わるか?と疑いながら聴いてみたのですが、激変ですね。
垂直位置の同距離の③に比べ、若干のエアー感が加わり立体感が生まれました。
ロゴプレートの右の方が近いこともあるからかもしれませんね。
7 ④の斜め位置バージョンです。⑥同様、④にエアー感が足されたような印象です。
リバーブやディレイでなく、マイキングで距離感を調整したい時などドンピシャでハマるんじゃないでしょうか。一番聞き馴染みが良くEQしやすいサウンドです。
8 ⑤の斜め位置バージョンです。⑤で床から近くぼやけてしまっていたところが緩和されロー感もありつつ輪郭が見えてきましたね。ただ⑥、⑦にも言えることですがどうやらこのスピーカーは垂直方向の方が倍音が良く出ており、全体的に抜け感はやや損なわれました。今回はリードでの比較となりましたがズンズンとブリッジミュートを録りたい時など、ダンパー位置をぐるっと回りながらタイト且つロー感のベストバランスを探すの楽しそうですね!
9 ⑨!?!?!?!さっきまでなかったやんけ!!!
そうなんですが番外編として、今回の検証で一番スタッフ評価が高かった③の位置にてマイクの向きを変更した⑨を収録しました。
①~⑧はキャビネットに対して垂直に立てておりましたが⑨はコーンに対して垂直に立てております。もちろんどちらが正解ということもなく狙ったサウンドになるようどちらもぜひ検証してみて欲しいです。
肝心なサウンドは③と比べると微妙な変化ではありますが、ややミッドロー帯域の厚みが増し、巻弦を弾いた時の存在感が上がっています。ただアタックやリリースのスピード感は③の方が反応は良く、レガートを多用するような滑らかに繋ぎたいフレーズなどではこの⑨がマッチしそうですね。コンプ感ではないヌルッとした良い塩梅の飽和感が欲しい時って結構あるんですよね。特にアンビエンス系では重宝されるのではないでしょうか。
マイク選びについてですが、ぶっちゃけこちらは千差万別。
マイクの種類が無数にあってサウンドとの相性も様々・・・
正解がない分遊びの余白が万歳で楽しいところです。
しかも先ほどこだわったマイキング位置選びもマイクによってまた激変します。
かといって普通はそんなに何本も実験で買えないですよね。
そんな方にはこちら!!
えー!?!?
オンマイク(20本)、オフマイク(16本)が比較試聴出来る記事があるんだって〜!?!?!?!?!?!?!?!
しかもリードとバッキングの両方のフレーズで〜!?!?!?!?
・・・
閑話休題
さていかがでしょうか!
マイク位置や角度によってサウンドがこんなにも変わるんですよね。
あなたが今弾いてるリグはどれをシミュレーションしたサウンドか知ってましたか?
それらを知り、狙って使用することで音作りの幅を広げ、また作りたい音への最短ルートを導き出すことが出来、更にギタリストとしてのスキルアップに繋がるのです。
アンプはリハスタにあるやつでも構いません。
本当にこの瞬間が楽しいので1回エアー録りしてみましょう。
音作りにこだわるギタリストは上手くなります。
曲中で必要とされる役割やサウンドを理解しているということは、勿論それらがプレイにも反映されますので。