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渋澤楽器:Intellijel Jellymix徹底解説 ミキサーを「演奏する」という新しい発想

2026.09.23

ACID渋谷とアーノ澤田が自分たちの気になったものを世界中から仕入れて皆様にお届けしている渋澤楽器。
二人がそれぞれ特に推したいものをご紹介していく企画、早くも第4弾!
今回はACID渋谷が、要注目製品としてIntellijelのミキサー「Jellymix」を解説します。

●Jellymixとは

ACID渋谷:今回紹介するのは、Intellijelの「Jellymix」です。すでに店頭でもかなり注目を集めている製品ですが、まずメーカーについて簡単に触れておくと、Intellijelはカナダ・バンクーバーを拠点とするモジュラーシンセサイザー・ブランドで、モジュラーシンセの世界では非常に定番的なメーカーです。これまで多くの製品をラインナップしていますが、今回のようなデスクトップ型の製品をリリースするのは、実はかなり珍しいことです。

これまでのデスクトップ製品としては、セミモジュラーシンセサイザーの「Cascadia」がありました。Jellymixはそれに続くIntellijelのデスクトップ製品として登場した2つ目の製品になります。しかも今回はシンセサイザーではなくミキサーということで、この点も含めて非常に興味深い製品だと思います。

アーノ澤田:Intellijelがミキサーを作るというのは、確かにちょっと意外ですよね。

ACID渋谷:そうですね。今回のJellymixは、5系統のステレオ入力を備えたコンパクトなアナログ・パフォーマンス・ミキサーです。このサイズ感でステレオ5チャンネルというのは、かなり実用的な構成ですよね。

アーノ澤田:特に最近は、デスクトップで音楽制作をする人や、複数のグルーブボックスを使ってライブをする人も増えていますから、こういう製品への需要は確実にあると思います。

●「小さいだけ」ではない、操作するためのミキサー

ACID渋谷:デスクトップ・ミキサーの市場を見てみると、ここ数年で非常に面白い製品が増えてきました。例えば1010musicのblueboxやTeenage EngineeringのTX-6などです。どちらも非常にコンパクトで、持ち運びやすさという点では大きな魅力があります。ただその一方で、TX-6は非常に小さなノブを採用していますし、blueboxは完全なデジタル・ミキサーで、タッチスクリーンや少ないアサイナブルなノブを使って操作する設計になっています。それに対してJellymixはちゃんと機能と一対一のツマミが付いていて、階層もなく非常にオーソドックスなアナログ・ミキサーの操作感を持ってるんですよね。

アーノ澤田:基本的に「1ノブ・1機能」なんですよね。この分かりやすさが非常に大きな特徴です。やっぱり、触って操作できるというのは大きいですよね。

ACID渋谷:Jellymixが大人気の理由も、まさにそこです。

アーノ澤田:小型ミキサーというジャンル自体は以前からありましたが、ミキサーは基本的に複数の音を受け取ってまとめるための機材なので、ここまで積極的に触って音を変えられる製品は意外と少ないんですよね。いわば「音の塊を作る装置」ですが、Jellymixはその過程自体を積極的に楽しめるように設計されています。
単なる音量調整のためのミキサーではなく、「音を演奏するためのインターフェース」になっているんです。

●Tilt EQが生み出す直感的な音作り

ACID渋谷:Jellymixの大きな特徴のひとつが、各チャンネルに搭載されたTilt EQです。Tilt、つまり「傾き」という名前の通り、周波数特性全体を傾けるように調整するEQですね。右に回せば高域ブーストと同時に低域をカット(明るく鋭い音へ)、左へ回せば低域がブーストと同時に高域を丸く(暖かく太い音へ)ワンノブで調整できるんです。一般的な3バンドEQのように、低域・中域・高域をそれぞれ個別に調整する方式ではありません。非常にシンプルですが、その分、操作に迷うことがありません。

アーノ澤田:普通のEQだと、どの帯域をどれくらい動かすか考えながら操作する必要がありますからね。OTO MACHINESのBébé ChérieもTILT EQを搭載していてあれも評価が高いよね。

ACID渋谷:Jellymixの場合は、基本的に「明るくするか、暗くするか」という感覚で操作できます。このシンプルな設計が、すごくよくできていると思います。例えばマシンライブのセットアップでは、複数のリズムマシンやシンセサイザー、グルーブボックスを同時に鳴らすことがありますよね。そうすると、どうしても中低域付近に音が集中してミックスが飽和してしまうことがあります。その際に3バンドEQで細かく調整するのではなく、Tilt EQを少し傾けるだけで全体の帯域バランスを整理できます。特定の音だけを削るのではなく、音楽全体のバランスを自然に変化させられるんです。個人的にはこの部分が非常によく考えられていると思いました。

アーノ澤田:たしかにライブ中に細かいEQ操作をするよりも、直感的に全体のキャラクターを変えられる方が実用的ですね。

●ミキサーの中に組み込まれたパフォーマンス機能

アーノ澤田:もうひとつJellymixで非常に面白いと思ったのが、各チャンネルにメイン出力とフィルター出力のルーティングが用意されている点です。つまり通常通りメインアウトへ送ることもできますし、フィルターを通した音だけをメインミックスに送ることもできます。これをチャンネルごとに設定できるんで、例えばリズムマシンのキックやベースはそのまま出力しながら、上モノだけフィルターを通す。そういった使い分けが簡単にできます。このフィルターの効きがまあすごいんです。

ACID渋谷:ローパスとハイパスがあるのでバンドパス的なこともできるし、ちゃんとレゾナンスも搭載されていて、しっかり音色を変化させることができます。すべての音にフィルターをかけてしまうと、全体の音像が変わってしまいますが、特定のチャンネルだけをフィルターに送ることで、音楽的な動きを作ることができます。

アーノ澤田:実はこれを他で同じことができそうな製品がないんですよね。Jellymixは洗練されていて、ミキサーを理解している人なら一瞬で理解して簡単に使えると思います。

●Clickless MUTEと細部へのこだわり

アーノ澤田:それと個人的に良いなと思ったのが、ミュートスイッチです。JellymixにはClickless MUTEという機能が搭載されていて、ミュート操作時に発生しがちな「パチッ」というクリックノイズが出ないように設計されています。特にミュートをパフォーマンス的に使う場合、クリックノイズが出てしまうと、それだけで演奏の邪魔になるから。

ACID渋谷:Jellymixはこういった細かい部分までしっかり考えられています。単純に小型化したミキサーではなく、実際に演奏で使うことを前提に設計されている印象があります。

●AUXセンド/リターンによる自由度の高いシステム構築

アーノ澤田:さらに2系統のステレオAUXセンドも搭載されていて、外部エフェクターを接続したり特定のチャンネルだけを別系統へ送ったりと、様々な使い方ができます。今回のように外部の空間系エフェクトへ送って戻すという使い方も非常に簡単で、外部エフェクターを積極的に使う人にとっては、かなり魅力的だよね。

ACID渋谷:そうですね。例えば特定のチャンネルだけをリバーブに送る。あるいはディレイなどのエフェクトを組み合わせて、音の残響や広がりを積極的に演出する。そういった実験的な使い方もできます。ミキサーというと、どうしても「入力をまとめて出力する機材」というイメージがありますが、Jellymixは外部機材との接続を含めて、音の流れそのものをデザインできる機材だと思います。

●「ミキサー」ではなく「楽器」として使える

ACID渋谷:ミキサーなのに積極的に操作して遊べる。個人的にはJellymixの最大の魅力はここにあると思っています。先ほどもTilt EQやフィルターの話をしましたが、これらを組み合わせることでリアルタイムに音楽を変化させられるんですよね。

アーノ澤田:確かに普通のミキサーだと、そこまで積極的に触ることはあまりないですからね。能動的というか、楽器のように遊べる製品です。

ACID渋谷:そうなんです。僕自身、普段「面白い」という言葉をそんなに頻繁に使うわけではないんですが、Jellymixは実際に触っていると自然に「面白い」と言いたくなる。それくらい操作そのものに魅力があります。

アーノ澤田:そう、 ミキサーって普通、「面白い」って言葉が出ないじゃない。それを「面白い」と言わせてしまう良さがJellymixにはあるよね。例えばライブの終盤でリズムを止めて、空間系エフェクトだけを残す。そこにフィルターをかけながら徐々に音を消していく。そういう演奏がミキサーの操作だけでできてしまう。これも非常に大きなポイントだと思います。

●安っぽさのない筐体とアナログ機材としての存在感

アーノ澤田:あと実際に触ってみて思ったのは、安っぽさがまったくないよね。

ACID渋谷:そうですね。このサイズの製品にありがちな「ただ小さくしました」という感じがない。ノブのサイズや配置、筐体の作り込みなど、しっかりとした存在感があります。Jellymixはコンパクトではありますが、単に携帯性を優先した製品ではないと思います。むしろ、机の上に置いて積極的に触ることを前提としたデザインになっている。

アーノ澤田:持ち運びもできますが、スタジオや自宅で常設してもいい感じですよね。

ACID渋谷:はい、全然メインミキサーとしてもいけますね。これだけアナログの入出力と操作系を備えていることを考えると、非常にバランスの良いサイズだと思います。

●部品選定にも見えるIntellijelらしさ

ACID渋谷:こうした製品の作り込みという点では、部品選定にも妥協なく、それでいてちゃんとアフォーダブルなラインを採用している。ジャックにはNeutrik製、ポットにはAlpha製、VCAはSound Semiconductor製などですね。

アーノ澤田:Intellijelもモジュラーシンセのメーカーらしく、基本的な部分をしっかり作っている印象があるね。Intellijelも新しいメーカーが次々と登場する一方で、長くモジュラーシンセサイザーの世界で製品を作り続けているメーカーだよね。

ACID渋谷:長く支持されているブランドには、それだけの理由があります。JellymixもそうしたIntellijelの設計思想が凝縮された製品ではないかと思います。

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