ACID渋谷とアーノ澤田が自分たちの気になったものを世界中から仕入れて皆様にお届けしている渋澤楽器。
二人がそれぞれ特に推したいものをご紹介していく企画第1弾として、ACID渋谷がRODECをピックアップ!
前回のMini Stylerに続いて、今回もRODECの要注目製品をご紹介!
前回の記事はこちら!


ACID渋谷:次に紹介するのが、RODECの「ZEST」です。API100シリーズの規格で出しているんですが、先ほどのMini Stylerは、テクノを作ったりトラックメイキングをする人がバンバン使うタイプの機材だと思いますが、ZESTはミキシングとかが得意な方が使える機材かなと思います。
アーノ澤田:たしかにMini Stylerとはまた違った方向性で、より幅広い用途で活躍しそうですね。
ACID渋谷:はい、厳密に言うとZESTはRODECではなく、カナダのNova Scotia州というところにあるTangelo Audioというメーカーが作っています。Tangelo Audioは「合理的な設計と質の高い部品調達が信頼性と高忠実度につながる」という方針の会社で、Synclavier Digital社のシンセ「Synclavier Regen」のハードウェア開発にも関わっています。

ACID渋谷:ZESTは「プレゼンス・エフェクト・モジュール」と呼ばれている製品です。そもそも音楽用語で「プレゼンス」というのはどういうものなのでしょう?
アーノ澤田:ギターアンプなどではお馴染みですよね。一般的にはプリアンプの段階でトレブルまでを作って、そこからパワーアンプに入るところでプレゼンスを調整します。超高域だったり、音の「存在感」をコントロールするようなイメージですね。
ACID渋谷:ZESTも単純に高域全体を持ち上げるというより、音の上の方の、いわゆる「張り」や「空気感」にあたる部分をうまく強調していますよね。
アーノ澤田:しかも、その部分をかなりピンポイントに狙える。
ACID渋谷:そうですね。そういう意味ではかなり特殊なアウトボードだと思います。
アーノ澤田:いわゆるエキサイターやサチュレーション系の機材とも近い部分はありますが、実際に音を聴いてみると、一般的なサチュレーターとは明らかに違うんだよね。
ACID渋谷:たしかに倍音が付加される感じはサチュレーションと似ている部分がありますが、掛かり方が違ってとても新鮮ですね。

ACID渋谷:ZESTには内部に2つのトランスが搭載されています。メーカーによれば一般的なトランスとは少し異なる方法で駆動しているそうで、詳細な仕組みについては明らかにされていません。この2つのトランスによって低域と高域のバランスを取っているということです。ですので単純に「トランスを通すことで音が丸くなる」とか「倍音で高域が持ち上がる」という話だけではなく、「気持ちの良いバランスを保ちながら存在感を出す」という設計思想のようです。
アーノ澤田:たしかに超高域とその少し下の帯域をうまく分けて、そこに独特の歪みや質感を加えているような印象を感じました。中低域に余計なサチュレーションがかかっていないのがうまいなあって思ったので。
ACID渋谷:EQで特定の帯域を単純に持ち上げるのとは違って、音のキャラクターそのものを変えながら、必要な部分だけを前に出してくれる。その「かかり方」が非常にユニークなんですよね。

アーノ澤田:(音源を聴きながら)一番最小設定で聴いてもすでに音が違うよね。
ACID渋谷:プレゼンスのパラメーターが左に「SOME」、右に「MORE」とあって、SOMEだから0ではなく幾らか掛かっている状態なんですよね。だからSOMEに振り切ってもある程度プレゼンスを出してますっていう状態になっているんです。

ACID渋谷:さらにZESTには、Normal、Boost、Overdriveという3つのモードが用意されています。
まずNormalモードでは明るめのトランス出力と適切な量の低域をブレンドされてて、3つのモードの中でもっともバランスの取れたサウンドになります。
アーノ澤田:実際に聴いてみると、これが一番「アウトボードらしい」感じがします。ほんのり質感が変わるんだけど、全体のバランスは崩れない。その上で音の上の部分だけが自然に強調されます。うるさくならないのがいいね。
ACID渋谷:そうなんですよ。高域を無理に持ち上げた感じがなくて、非常に自然です。
Boostモードでは、Normalよりも上の帯域が強調されます。メーカーの説明では、出力レベルが約1dB上がり、周波数特性は3kHz付近からわずかに上昇。それより低い帯域はわずかに低下するとのことです。いわゆるチルトEQのような、全体のバランスを保ったまま上方向へシフトする感じでしょうか。
アーノ澤田:このあたりのバランスがかなり計算されているんだと思います。「ここがちょうどいい」というポイントを狙いやすい。
ACID渋谷:そして一番強烈なのがOverdriveモード。3kHz以上の周波数特性を急激に上昇し、さらに1kHz~3kHz付近も同時に引き上げられます。そのため低域は大きく変わらないものの、中高域~高域が強く強調されて音量自体が少し大きくなったようにも感じられるほどの存在感が出てきます。
アーノ澤田:かなり思い切って使えるモードですね。
ACID渋谷:そうですね。Dry/WetのMixも調整できるので、そこをうまく使えばかなり細かく追い込めます。

アーノ澤田:実際に聴いていて、Normalが一番使いやすそうですね。
ACID渋谷:そう思います。ほんのり質感が変わる程度なのに、全体のバランスがほとんど崩れない。それでいて、上の帯域だけがしっかり強調される。しかもうるさくならない。
アーノ澤田:普通の真空管アウトボードなどにも引けを取らないくらい、いいですね。
ACID渋谷:お、嬉しいコメントありがとうございます!みなさん、アーノ澤田が褒めてますよ。

アーノ澤田:ちなみにこれ、いくらくらいなんですか?80,000円くらい?
ACID渋谷:単品だと税込46,900円です。RODECのONE(500シリーズ用シャーシ)が税込59,000円。
アーノ澤田:既存のAPI 500シリーズ・シャーシにZESTなどの100シリーズを搭載するためのアダプターも用意されていたよね。
ACID渋谷:はい、500 to 100 Series Adapterは税込34,800円です。
アーノ澤田:なるほど。そうなるとZESTを1台だけではなく、複数台使いたくなりますね。個人的には、これが500シリーズで出たら面白い。1スロットで使えるようになれば、複数台をそれぞれ別のトラックにインサートして使えますからね。
ACID渋谷:確かに!RODEC ONEは直列になりますからね。でもZESTだけでなく、ほかのEQやプリアンプと組み合わせて使っても面白いと思います。

アーノ澤田:こういうモジュラー系の機材って、面白いエフェクターが出ていてもどうしても単体で使う系かなって思いますよね。がっつり音変える感じの。アウトボード界隈からすると少し壁があるというか。でもこういうシャーシシステムなら、他の機材と組み合わせて使うことも自然にできていいね。
(ZESTをいじりながら)やっぱ面白いですね、これ!
ACID渋谷:本当に面白いです。
アーノ澤田:たしかに、こういう機材を知っている人が使っていると、ちょっと羨ましくなります(笑)。
ACID渋谷:そうなんです。むしろ、この記事で紹介するのがちょっと嫌なくらい(笑)。
アーノ澤田:「俺だけの秘密兵器」にしておきたい?
ACID渋谷:そうですね。それくらいの機材です。
アーノ澤田:特にマシンライブをやっている人なら、最後段にこれを入れておくのはかなりアリだと思います。
ACID渋谷:なるほど。EQで無理に高域を持ち上げることなく、音をすっきり上に抜けさせられるというのは大きいですよね。
アーノ澤田:ライブでは会場が大きくなればなるほど、音がいろいろなところで吸われていきます。そういう環境でも、元の音のレンジ感を大きく崩さずに存在感を出せるのは、かなり強いと思います。

アーノ澤田:ちなみに、SideStepperと組み合わせても面白そうですね。
ACID渋谷:そうですね。この組み合わせもかなり面白いと思います。SideStepperはシーケンサー付きのゲート&ダッキングマシンで、一風変わったサイドチェーンのようなことができるんですが、音をたくさん加工した後にZESTで補正するというのもとても理にかなった使い方だと思います。というかZEST、何にでも使いたくなっちゃう。
アーノ澤田:ZEST、かなり気に入りました。僕からは発見されないアイテムなので。
ACID渋谷:ありがとうございます。気に入ってもらえて嬉しいです!

