ソリューション

TAOCがかんがえたさいきょうの卓上スピーカースタンド、MSTP-Dシリーズをレビュー!

2024.09.11

鋳鉄(ちゅうてつ)製スピーカースタンドやアクセサリをリリースし続けてはや40年、日本が誇るアイアンマンのTAOCは、愛知県豊田市に製造拠点を持つオーディオアクセサリーブランド。

同社のSTUDIO WORKSレンジはプロオーディオ用スピーカースタンドを2023年からスタートしており、今回は他に類を見ない本気度の卓上スピーカースタンド、MSTP-Dをレビューしてゆきます!

卓上用途で売れ筋のモニタースピーカーを色々乗せてみたのでご購入の参考になればと思います。

そして卓上スピーカースタンドたるもの、如何なる机の上でも実力を発揮してもらわないと、という事で、DTMデスクでもないスウェーデン発祥の生活雑貨店で購入した白い折り畳み机の上にMSTP-Dを設置。少し意地悪な視聴環境を用意しました。

敢えての過酷な環境ながら、ヘビーウェイトなスタンドがもたらした変化とは!?

MSTP-D

15cm

20cm

まずはスタンド本体の仕様についてご説明します。

180 ×200mmというわずかに長方形の天板には、TAOCが特許を取得した三重鉄板を採用。こちらは既存製品のMSTP-SやMSTP-Wにも使用されるTAOC自慢の制振板です。

密度の異なる鉄板を重ね合わせる事で、さまざまな周波数の振動を減衰。スピーカースタンドにとって理想的な効果を得られる構造になっています。支柱高さは15cmと20cmの2ラインナップをご用意。

製品にはスパイクと滑り止めシートが付属しており、スパイクを使用する事で机に伝わる振動をさらに伝えにくくすると共に、+15mmの高さ調整が可能です。

滑り止めシートは別体となっていますので、スピーカーにスパイクがついているfocal SHAPEシリーズやreProducer audioのEpicシリーズはシートを貼らず、IK multimediaのiLoud、NeumannのKHシリーズの様な樹脂製エンクロージャーの物にはシートを貼って試してみました。

スパイクはその名の通り針のように尖っていますので、そのまま設置すると机を傷つけてしまいます。今回はスパイク受けのTAOC / PTS-A(別売り)とのコンビで試してみました。

また天板と底板には完成時に使用しない不思議な穴がひとつふたつ。…実はこのスタンド…変形するんです!

支柱を前または後ろに1段階オフセットする事が可能な調整穴と、楕円形の支柱を机の環境に合わせて90度回転させる事ができます。

キーボードやMIDI鍵盤、フィジカルコントローラーなどでなにかと手狭になる作業デスクの上ですが、どちらの機能でも支柱が一歩後ろに引いてくれるのは大変ありがたいアイデアですね。

それでは色々スピーカーを載せてみます!

Focal Shape / 40

SHAPEシリーズの末っ子ながらデスクトップ用途ではADAM A4Vやgenelec 8020と同様、非常に高い人気を誇るSHAPE40はジャストフィット。どっしりと構えたシルエットも格好良いです。楕円形支柱とツィーターのウェーブガイドも見た目が合ってグッド。

SHAPE40に限らず、どんなスピーカーでもスタンドに乗せると制振されるのでスッキリした音になります。初めてスピーカースタンドを導入されると音量が少し落ちた様に感じるかもしれませんが、正常ですのでご安心下さい。

今回も例に漏れず音が小さくなりスッキリした音になりましたのでインターフェースの音量を少し上げてみたところ、SHAPE40が持つパッシブラジエーターにとって調子が良い環境になりました!やはりドライバーがある程度動く音量を出さないとSHAPEシリーズは勿体無いですね!

Genelec / 8320

MAさんから作曲家さんまで多くの現場で愛されているGenelecの8020 / 8320をセット。作家さんの作業机に置かれている姿はプライベートスタジオでよく見かけますね。

Genelecの8000シリーズモニタースピーカーで2番目に小さなサイズとなりますので、全体的に余り気味になりました。MSTP-Dに載せるなら8030 / 8330がちょうど良い大きさだったかもしれません。

元々卓上用途で評価の高いIso Pod(純正ゴム足)と組み合わせる事になりますが、SHAPE50ほどの変化はなし。もうワンサイズ上の8030で、それなりに音量を出す環境から効果を発揮しそうです。

「サウンドに変化無し」と言うと、買っても意味がないのでは?と思ってしまいますが、言い換えると「スタンドによる音質変化が気にならない」と言うことになります。スタンドの評価としてはむしろ褒め言葉ではないでしょうか?

本当に高さだけを変えたい、それ以外は変わってほしくない!という方におすすめします!

Neumann / KH80DSP

TAOCは国産ブランドならではのサービスとして、天板、支柱長さ、底板のサイズが細かくオーダーできます。(特注オーダーはお問い合わせください)

ですがオーダー無しでこのフィッティングは満点に近いのではないでしょうか?ピッタリとまではゆきませんが、見た目にも美しくバランスよくマウントできました。

興味深かったのは樹脂筐体とTAOCのMSPT-Dの相性が良かった事。樹脂筐体のスピーカーは金属筐体のスピーカーと比べて一定以上の音量を出すとエンクロージャーのビビり音が聞こえたり、特に小型スピーカーではバスレフ口径も影響して低音に無理が出てくる場合がありますが、これらのピークをいち早く掴める様になりました。(ビビり音が消えるわけではありません。)

一定以上の音量を出す場合は付属の滑り止めシートが良い方向に働きそうで、IK multimediaのiLoudシリーズにも同じ作用が働きそうだなと思いました。

IK Multimedia / iLoud Precision 6

ということで、樹脂ボディのIK Multimedia / iLoud Precision6を乗せてみました。

見てくださいこのシンデレラフィット!このくらいのサイズのスピーカーを想定すれば良かったのか!と、スピーカー候補をここからワンサイズ大きめで選ぶ事にしました。

今回視聴した中で最も、『普通サイズのスピーカースタンドに乗せた時の音』が出ました。元々トランジェント特性に優れたスピーカーなので、スタンドに乗せるとさらにシャープになるかなと予想していましたが、音楽的な響きも残されつつ、他のスピーカーで低域が物足りないなと感じていた事もPrecision6では無く。

これが卓上(しかも適当な折りたたみ式の机)で実現するとは思ってもいなかったので、視聴スタッフ一同で驚きました。

さらに付属のARC2測定マイクとライセンスも付属しますので、これでキャリブレーションを取ってライバルに差をつけろ!

re Producer Audio / EPIC 5

こちらは撮影のために乗せてみましたが、残念ながら足のサイズが本当にギリギリ合わず。スピーカーに何かがぶつかるとすぐに足が外れてしまう位置になってしまいました。渋谷店の視聴機は旧3本足スパイクなので、現行型の4本足だと違う結果になったかもしれません。

スパイクと天板の間はなんとも神秘的な隙間が生まれていて、ちょっとドキっとします。この隙間でパッシブラジエーターが躍動する所が聴きたかったのですが、落下の危険があるので音は出しませんでした。

KS digital / C5

卓上モニターとしても活躍する事が多いC5には、元々付属品として鉄のスピーカーベースが付属しています。

TAOCのスタンドにそのまま乗せても効果がありますが、スピーカーベースとスタンドが鉄同士で接触、それも面設置となるので、C5とスタンドの間はインシュレーターと合わせて更なる制振効果を狙うか、スピーカーベースを外して直置き設置としても良さそうです。サウンドは同軸のメリットである位相の良さが際立ち、センターがよりわかりやすい感じに。

位相が良いという事で意地悪な実験も追加しました。卓上スピーカーに多いLR間が80cm以内という、最適なスピーカー間の距離よりは少しナローな環境でもテストしましたが、結果は何の問題も無く良好でした。

DAWのPANつまみとスピーカーの定位に著しい乖離がなく、左右の把握がしやすかったです。

Music RL906

美しいスピーカーは美しいスタンドに乗せて欲しい。

純正スタンドが用意されているRL906ですが、TAOCも負けておりません。iLoud Precision 6に続きこちらもミラクルフィット。

RL906のバスレフは上向き。ドライバー以外から出るセカンドソニックを徹底的に耳の外へ追いやりたいというRL906の設計概念が伺えるアプローチですが、その様にローエンドをタイトに鳴らしたい方はMusik純正よりTAOCの方が目的の音質を手に入れ易いかもしれません。純正スタンドと比べると価格もお求めやすいです!

サイズ確認、視聴を終えて

物理的な質量(約6kg/1台!!)からか、これまで色々なメーカーからリリースされた卓上スタンドと比べて机に対する影響が圧倒的に少なく、同社の据え置き型スタンド(MSTP-S、MSTP-W)と同じサウンドキャラクター、製品コンセプトを感じました。

本格的にスピーカーのセッティングを行うなら、スピーカーは机から切り離してスピーカースタンド使いましょう。というポイントは我々販売店からお客様にアピールしてきたところですが、今後は『ただしMSTP-Dは除く』になりそうです。ゲームチェンジャーと言っても過言ではないと個人的には思いました。

特にローエンドの収まり具合が気持ち良く、リファレンスにした音源のキックやベースの『減衰スピードがわかりやすい』のは良いモニタースピーカーにも共通するポイントだと感じました。

巨大で高額な一部のスピーカーはこの特性を持っていますが、ミドルクラスのスピーカーにスタンドを追加する事でこの効果を付与できるのはコスパ、出音の信頼に十分値するかと思います。

他社のデスクトップスタンドから入れ替えられた方やスピーカーを机の上に直置きされていた方にはスッキリし過ぎて物足りない音色に感じるかもしれませんが、振動によって鳴っていた不要な音が減衰すると考えれば、このスッキリ具合を信じて作業される方が正確なモニター環境に近づくのでは無いでしょうか!?

あわせて欲しい、TAOC製ステンレススパイク受け!

大切なデスクにスパイク足をそのまま置くなんておっかない!でもスパイク無しのベタ置きは効果が薄れそうでイヤだ!という方が殆どと思いますので、ステンレス製スパイク受けのPTS-Nもおすすめ致します。

比較的リーズナブルながらしっかりと効果があるスパイク受けは、同じTAOC製だとスパイク溝も十分にあり

Vツイン多田
現行/ビンテージ問わず音が出るものは何でも好きなベーシスト。趣味はDIYとバイク。
記事内に掲載されている価格は 2024年9月11日 時点での価格となります
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