コロナ禍での外出制限をきっかけに世界的にホームスタジオのニーズが増え、同時期にDAWやI/Oのアップデートやリリース後のプラットフォームのインフラが進んだ事でDolby Atmosをはじめとする空間オーディオの導入も敷居が下がったと実感するこの頃。
みなさんこんにちは、Vツイン多田です。空間オーディオのニーズが高まって来ている昨今、導入時期はまだ先という方もどんなスピーカーが適切なのかはざっくり知っておきたいところです。
今回は、現在購入できるスピーカーで組む際にチェックするべきポイントを以下にまとめてみました。
ステレオや平面サラウンドでは場所さえあればクリアできるポイントですのであまり重要視されませんが、空間オーディオで使用する場合はハイトスピーカーの存在がありますのでなにかと制限があります。
純正オプションでウォールマウント金具は各社用意がありますが、賃貸などで壁に穴が開けられない環境では使用するのに工夫が必要です。
プライベートスタジオで設置する際に人気のマウント方式をご紹介いたします。
施工の段階からスピーカーレイアウトとリスニングポイントが計算された商業スタジオと違い、プライベートスタジオは構造物に対してあとから補正をかける方法しかありません。マネージメントソフトウェアで測定+コンピューターで補正する方式に加えて、最近はスピーカーに内蔵されたDSPで補正処理を行う製品が人気です。
音楽、映画、ゲームなどあらゆる制作現場の定番で、Gシリーズの登場で近年はホームオーディオ(=リスニング)の分野でも認知度が高まってきたgenelecは、言い換えるとある種制作からリリース後までを一貫してコントロールできるスピーカーのひとつではないでしょうか?
このカテゴリにおいて卓上スピーカーとして確固たる地位を築く8320(4インチ)から始まるSAMシステム搭載モデルは外せません。
上を見るとthe Onesの8331, 8341などのラインナップもありますので、LRのステレオ作業も加味して要所だけハイエンドgenelecをチョイスというのもアリでございます。
最小クラスの8320では底面ゴム脚のISO podを取り外すと⅜のマイクスタンド用ネジ穴が現れます。
本格的なスピーカースタンドを7本用意するとなかなかな金額になるところ、一般的なストレートスタンドまたは頑丈なブームスタンドで設置することができますので、リーズナブルに設置が可能です。
またウォールマウントも豊富に用意されているので、DIY時にも金具の組図を確認することで事前に取り付けイメージがしやすいのもポイントです。
83xxシリーズは音声ケーブルの他にLANケーブルを接続する事でGLMというマルチチャンネルのキャリブレーションが利用可能になります。
ソフト自体は無料、測定マイクとそれを接続するGLM kitが別途必要になりますが後々キャリブレーションソフトの購入が不要な事と、ソフトウェアはDAWやMacの音声デバイスに介入しない作りになっていますので安定性や利便性も高いものとなります。
GLM kitにはオプションでボリュームコントローラーが設定されており、Dolby Atmos対応を謳うほとんどのI/Oが別売りオプションとしているマルチチャンネルの一括ボリュームコントロールができるのも魅力です。
シンプルでお手頃な9310ボリュームコントロールと、GLMソフトウェアをそのままハードウェアにした様な9320がラインナップされています。
あとで購入するとなると価格が高い製品ですので、最初からスピーカーブランドが用意してくれているのはバリューが高いですね!
初期の導入費用をできるだけ抑えつつも、セットアップからキャリブレーションまでできるオールインワンスピーカーです。
既にステレオ環境が完成しているスタジオにイマーシブ環境を追加する場合に特にオススメです。
樹脂性のエンクロージャーは軽量に作られており、genelec / 8320と同じくマイクスタンド取り付け穴が備わっているので安価なマイクスタンドにも取り付けが可能。
お手軽に設置が可能という事は撤収も容易なので、必要に応じてお部屋からスピーカーセットを出し入れする、なんて事も叶います。
オフィシャルのマウント金具はウォールマウントの1種類のみと限られていますが、他社からリリースされている多くのマイクアダプターが利用できますので、可能性は無限大。
今回ご紹介するスピーカーの中で最もお手軽に測定可能です。
まずハードウェアの追加購入は不要で、スピーカーを購入するといくら要らないと言っても絶対に測定マイクが付いてきます。スピーカー1本買うと必ずマイクが1本ついてきます。
測定の手順はスピーカー背面の測定マイク入力端子にマイクをセットし、キャリブレーションボタンを押すだけ。
測定時間も本記事掲載のスピーカー中最速を誇ります。
ここがポイント
一般的には縦長に使用する事が多いiLoudですが、このMTMデザインのおかげで横置きにも対応しています。
センタースピーカーを横置きとした場合は作業ディスプレイとの干渉にも有利ですので、サラウンドの映像を扱う職種の方にも設置レイアウトに制限をかけずご自宅で構築することができます。
マウントの豊富さはピカイチ、サブウーファーまで含めた全てのスピーカーを網羅し、クラス最大のパワーアンプを搭載した小さな巨人です。
4インチウーファーを備えるクラスでは普通サイズですが、他社が100w未満のパワーアンプを搭載するのに対してKH80DSPは驚きの120w。大きな音が出せる事は勿論ですが、他社のアンプと比べて同音量において歪みが出にくい仕様となっております。
Neumannのマウントは他のブランドを凌駕する脅威のバリエーション。上位機種と共通化された金具類の一覧図はまるでなにかの設計図の様。
いや…違うっ!これは俺たちのスタジオの設計図ッ!この金具とこの金具でマウント問題を解決できるぞ!早速ロックオンに相談だ!
genelecと同じく専用測定マイク(MA1)を追加購入して、専用ソフトにてキャリブレーションを行います。
キャリブレーション時にはリスニングポイントとスピーカーの距離を手動入力する項目が数箇所ありますので、メジャーの準備をお忘れなく!
非常に豊富なマウントが魅力ですが、全て純正で揃えると他社のマイクアダプターを利用した構成より高額になります。
落下や保持力はNeumannお墨付きですので、工夫で初期費用を抑えるアプローチではなく、しっかり確実に固定されたい方におすすめです。
平面サラウンドや空間オーディオにとって定位の良さはパンニングの滑らかさに直結するポイントですので、一般的な2way構造と比べて同軸構造が有利とされています。
MO-1 MkIIは設備系ではなく音楽用スピーカーにAES67/Danteポートを搭載したスピーカーというのも珍しく、Dante回線が余っている方、または最も音楽的な音が出るスピーカーのひとつであるMusikで辿り着きたい目的のトーンがある方は、新しくなったMO-1を是非お試し下さい。PoEでは無いのでイーサネットケーブルと電源ケーブルが必要です!
従来のMO-1からサイズはそのままに大きな性能向上と機能拡張が与えられたMO-1mkiiは、musik初となるDante/AES67ポートを搭載しました。
約4インチのウーファーユニットを搭載しながらも他モデルを凌ぐコンパクト設計は同軸ならでは。先代MO-1からしっかり設計を引き継ぎながらPWMアンプは95wとパワーアップを果たしています。
純正ラインナップはお馴染みの卓上スタンドとフロアスタンドのみ。マイクスタンドに接続できるネジ穴も無しなので天釣りやウォールマウントはハードルが高くなります。
また3.5kgと先代mo-1と比べてやや重量が増えたので、マウントの強度も考えると何かしら金具の製作が必要になるかと思います。
専用ソフトやマイクは設定が無く、外部のソフトウェアにてキャリブレーションとなります。
AoIPは何も無いところから揃えると初期投資がガッツリかかりますが、4ch以上のアナログアウトがあるAES67またはDante搭載のI/Oをお持ちなら、あとはLANケーブルとAES67機器があればコンパクトに編集やリスニング環境が整います。
おや?そう言えば最近NeumannからピッタリなI/Oが出ていたような…?
参考I/O
neumanm MT48
スタンダードなフォーマットである7.1.4chだと、スピーカーが合計11本にサブウーファー1本、そしてそれらを繋ぎコントロールする入力&出力機器が必要です。
なにはともあれコンピューターが必要です。
制作にはレンダラー内蔵のDAWが必要ですが、リスニングのみならNetflixやApple musicなど対応アプリが入っていればOKです。
MacはAppleシリコン且つBig Sur以降のOSバージョンであれば大体オッケーですが、OSバージョンによって設定や必要なソフトウェアが異なりますので、そこは別のコンテンツにてご紹介します。
Dolbyの推奨しているスピーカー構成の最小が5.1.2chであるので、8chの物理出力があればスタートできます。
ならインターフェースは選び放題じゃないか!とは行かないのがまだまだ空間オーディオが発展途上の所以。
一般的なインターフェースはマスターボリュームのつまみを回した時にステレオしか対応していないため、たくさんスピーカーがあってもLRの音量コントロールしかできません。
ラインアウト3ch以降を一気にコントロールするための工夫が必要になります。
AVID: MTRXシリーズは対応済み
Apolloシリーズ: Dolby Atmos対応済み
RME: グループ機能を使用してフェーダーグループを作れば制御可能
Metric Halo: Dolby Atmos対応
Audient: ORIAが対応
Antelope Audio: Orionシリーズ、Galaxyシリーズが対応
Apogee: ラックタイプのSymphonyシリーズが対応
上記対応もシンプルなボリューム操作のみのものと、EQやディレイ補正を手動でかけられるもの、外部測定ソフトの測定プロファイルを読み込めるものなど様々ですので、ご相談ください。
この他レンダラーを内蔵したDAW(Pro Tools, Logic, Studio One, Nuenoなど)またはDolby Atmos Rendeler、Dolby Access(Windows)が必要になります。