こんにちは。Vツイン多田です。
去る2月某日、Avid Creative Summit 2024の前日にRock oN Shibuyaにとてつもないスピーカーがやってきました。
Genelec Japanの皆様が前日の朝から渋谷店のリファレンススタジオに運び込んだモデルは8381A。8331〜8361と既存ラインナップのあるThe Onesシリーズ最新作にして最大級のスピーカーです。
複数人スタッフが丸1日かけて綿密に設置と調整がされたフラッグシップ機を、Rock oNスタッフがGLMソフトウェアとの連携や販売〜設置のタイム感、トラブル時のフローなど販売店からの目線多めでお伺いし、そのレポートをご紹介します!
設置後ひと息付いたところで当店リファレンスルーム全体を見渡してみると、とにかくデカい。まずはそのエンクロージャーの大きさと、搭載される各ユニットのスペックを見てみましょう。
高さ1,458mm、幅500mmと言えば、ベースアンプの10インチ8発キャビネット、Ampeg / SVT810とだいたい同じくらい。見た事がない程デカいスピーカーだ!とはなりませんのでご安心下さい。
とは言え、ライブハウスではなくスタジオに、それもペアで置くのでやはり圧巻。
Genelecが想定する8381Aの立ち位置としては、床に置けるラージモニター(フリースタンディング型で柔軟に設置でき、高度な室内音響キャリブレーションにも対応)。初対面では若干の威圧感を感じつつも、見たまんまのワイドレンジな出音を期待してしまいますね。
◾︎ウーファー: 381mm(15インチ)
上側ユニットに1機、下側ユニットではエンクロージャーのサイドに2機の計3機が配置されています。
クロスオーバーは50-100Hz
◾︎ミッドレンジ: 127mm(5インチ)
上側ユニットの同軸ツィーターを囲う様に4機配置されています。
クロスオーバーは150-250Hz
◾︎同軸ミッドレンジ: 127mm(5インチ)
エンクロージャー真ん中に1機が、ツイーターと同軸上に配置されています。
クロスオーバーは500Hz
◾︎同軸ツイーター: 25mm(1インチ)
同軸ミッドレンジユニットの真ん中にあります。
クロスオーバーは1,800Hz
ちなみに、8381Aのドライバーサイズはインチ表記ではなくミリ表記です。25mmのツィーターはGenelecのスペックシートではしっかりと31/32インチと記載があります。
ここでスピーカーの諸元に詳しい方ならお気づきになったポイントがあると思います。8381Aはクロスオーバーが可変するんです。
「Adaptive Point Souce」と名付けられたコンセプトの要の一つで、SAMシステムの測定ソフトウェア”GLM”での測定後に、それぞれのドライバーが担当する周波数をルームアコースティックやリスニングポイントに合わせて最適な値に設定。これにより各ドライバー間の繋がり(クロスオーバー)に加え、指向性もコントロールするという工夫がなされています。
アクティブクロスオーバーの技術自体はDSPを搭載するスピーカーなら他社も含めて従来から存在するテクニックですが、8381Aは4機のミッドレンジユニット(QMS=quad midrange sysmem)と綿密に計算されたウェーブガイドが、クロスオーバーに留まらず指向性をもコントロール。「Adaptive Point Souce」が示すリスニングポイントのコントロールを実現するための技術がここでも披露されています。
上側ユニットをチルトさせる機構と、オプションでスピーカー自体を30cm嵩上げする事も可能なので、設置の段階でアタリを付けてGLMでしっかり測定。という流れが効果的です。
RAM-81はトータルで5,926Wの出力を持つモンスターパワーアンプ。中規模コンサート会場のラインアレイも動かせるその圧倒的な出力は、カンマを入れずに5926と表記した際に「新しいGenelecの型番かな?」と錯覚するほど。
8381Aの最大出力は約2,200wですので、電源面での余裕は2倍以上となり、その広大なヘッドルームを以ってして歪無きパワーソースを確実にユニットへ伝える事ができます。
さらに、RAM-81は顧客に導入される8381Aの個体ひとつひとつに合わせてハードウェアキャリブレーションも施された状態で出荷されており、スピーカーとアンプが真に1:1となる専用品の中の専用品になっています。
Genelecスピーカー専用のGLMソフトウェアでの補正も第5世代となり更なる精度とフレキシビリティを手に入れましたが、製品の個体差をソフトウェア補正の前段階で行なっているこの気質と作法。「本気の人が使うので、我々も本気のスピーカーを用意しました!」と言わんばかりのフィンランドメイドでありながら、我々日本人の倫理規範、心に通じる「まこと」を感じます!
モニター環境に欠かせない要素と言えば、変えない事、変わらない事。
エンジニアの皆様はご自身の耳の感覚を把握しつつ、仕事場のルームアコースティックや、その日伺うスタジオに設置されているスピーカーの特性との差異を調整してお仕事をされいますよね。言わば自分の耳を道具の方に合わせると言うアプローチの方も多いのではないでしょうか。
Genelecは製品の代変わりスパンが長いブランドで、1年経ったら突然Mk IIが出た!という事もありません。製品登録を行うと最長5年まで延長保証が受けられるというサスティナビリティ溢れるトリートメントも魅力的なブランドなのですが、なんと8381Aは他ラインナップを凌ぐ脅威の10年保証。
この先10年間は何が起きてもGenelecがサポートしてくれるという強力なアドバンテージは、ご自身のこれから10年のキャリアと共に歩むパートナーとしてはこの上ない安心感になりますね。
Rock oNが気になったところを聞いてみた
最後に、セットアップ日とACSU本番の2日間でご来社頂いたGenelec Japanの皆様に、Rock oNから質問をしてみました。具体的なご購入までの参考になれれば幸いでございます!