前回Cinematic Studio Strings(以下CSS)の追加のキースイッチ(以下KS)のためのKSPスクリプトを紹介した際に、僕の環境ではあまりKSを使わないと書きました。今回はその理由について説明したいと思います。
まず、劇伴の仕事でデモトラックを作る事をモックアップと言いますが、これは例えばピアノだけで簡単にアレンジした曲を実際にオーケストレーションしたデモをDAWを使ってトラッキングしていく作業を指します。大昔に「打ち込み」と呼んでいた作業の事ですね。
僕はポップスのアレンジ全般の事は詳しくないので、以下はあくまでも劇伴の仕事に関する解説だと思って受け止めてください。
例えばピチカートのKSの小節を再生した直後に、本当はスタッカートで再生されるべき小節をプレイバックすると、そのピチカートのKSが残ったまま再生される可能性が出てくる、と言う点ですね。それを回避するために前回のCSSでMIDI CC58のコンティニュアスデータを使って奏法の切り替えをする仕様にしたんだと思います。
そして数秒の違いかもしれませんが余計に時間がかかる。さらにその音源のInstrumentトラックをアクティブにする際にもそれなりに時間がかかります。僕は基本的に1トラック1奏法でテンプレートを組んでいますが(僕はNuendoを主に使っています)、M.2のSSDからトラックをアクティブにする時間は大体5秒から長くても15秒くらいです。割とせっかちな性格なのでこの音源のロードはあまり待ちたくない派です(笑)。
例えばクラリネットのスタッカートの再生タイミングでトラックオフセット設定するとレガート奏法の再生は前のめりになってしまう、、、等の問題ですね。KSを使わずに奏法別にInstrumentトラックを用意すれば、各奏法毎にトラックオフセットを設定できるわけです。
それからここ3~4年くらいかな、レガート奏法のための新しいスクリプトを採用しているメーカーがいくつか出てきて、そのスクリプトの負荷が大きからだと思いますが、マニュアルに「起動するInstrumentトラックを160ミリ秒 ネガティブ側にオフセットしてください」みたいな指定をしてくる音源があったりします。そういう事もあって、メーカー側もKS使わない前提でサンプリング音源をリリースしているんだろうなという気はします。
そしてモックアップのミックス時にスタッカート系の奏法だけ歪ませたりレガート系の奏法とは別のコンプ&EQするのは現在ではかなり一般的です。オケ楽器に歪み?と思う方もいるかもしれませんが、歪みと言ってもエレクトリックギターの歪みではなくてサチュレーション系の歪みの事です。
これもKS使うと面倒というか無理ですよね。
そして、同じストリングスでもレガート系にかけるリバーブとスタッカート系にかけるリバーブは別々の設定にしたいので、その際も奏法別にトラッキングしてあれば簡単です。