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空間と歴史を閉じ込めたオルガン音源 Spitfire Audio 『Shakespeare’s Church Organ 』レビュー!

2025.07.08

Spitfire Audioから『Shakespeare’s Church Organ 』がリリースされました。
英文学史上最も讃えられた劇作家ウィリアム・シェイクスピアの埋葬地でもある英国ホーリー・トリニティ教会に設置されている実際のオルガンを収録している音源で、
何世紀にも渡って鳴らされてきた歴史的価値の非常に高いオルガンの音を、教会のアンビエンスを含めDAW上で再現できる、という感じのようです。
アンビエンスは3種類のマイクポジションで録音されており、Spitfire Audioの今までの製品も収録のクオリティがかなり高かったので、今回も期待できそうですね!

メーカーの紹介動画がありましたので、雰囲気は下記から掴めるかと思います。


ちなみにホーリー・トリニティ教会と、実物のオルガンはこちら。

メーカーサイトには下記のように記載がされていました。
“イングランド・ストラトフォード=アポン=エイヴォンの中心に佇む「ホーリー・トリニティ教会」。グレードI指定の歴史的建造物であり、英語史上もっとも偉大な劇作家、ウィリアム・シェイクスピアが洗礼を受け、今なお眠る場所でもあります。この壮麗な教会に響くパイプオルガンの敬虔な音色を、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)との特別なコラボレーションにより収録。数々の音色の組み合わせを、教会の豊かな音響の中で丁寧に記録し、『十二夜』の舞台でも実際に使用されました。長きにわたり礼拝の場で人々の心を動かしてきたこの歴史あるオルガンの、詩的で時を超える響きが、あなたのスコアにもシェイクスピアの精神を呼び起こします。”

なんだか緊張してきた所ですが、
実際に使用して細かい所まで見ていきたいと思います。
早速始めましょう!

UI画面

まずは恒例のUI画面から。

近年のSpitfire Audio製品にも見られるシンプルなUIですね!

左はプリセット一覧です。

コントロール部は上下で分かれていて、
上部はメインコントロール部になります。
左から、EXPRESSION、DYNAMICS、RELEASE/REVERBノブとなっており、MIDIで制御が可能。
EXPRESSIONとDYNAMICSはホイール制御やオートメーションを書いて表情付けをする時などにも使います。
RELEASE/REVERBノブは、ノブ自体をクリックするとどちらの値をコントロールするかの選択画面が出てきます。

下部は各3点のマイクのレベルで、距離毎のマイクのON/OFFやレベルフェーダーですね。

なお備考ですがこの製品はDAW上では『Shakespeare’s Church Organ』として表示されていません。
同社の『Ensemble』というプラグインに対応した有料ライブラリという立ち位置ですので、立ち上げる時などは『Spitfire Ensemble』プラグインを選択します。

プリセットについて

本製品には33種類のプリセットを収録。

画面左側にプリセットが並んで表示されており、大枠は下記の3種があるようです。

  • 鍵盤で演奏される音を中心とした「マニュアル・レジストレーション」(11種類)
  • 足鍵盤による低音域の演奏に特化した「ペダル・レジストレーション」(4種類)
  • マニュアルとペダル両方の音を重ね合わせてより豊かで表情豊かな音色を生み出す「コンビネーション・プリセット」(18種類)

メーカーページ下部にプリセットの解説がありました。
https://www.spitfireaudio.com/shakespeares-church-organ

鳴らしてみる

さてお待ちかねですが早速音を出してみましょう!

当然なのですが非常に本格的なサウンドで、
プリセットをそのまま鳴らしても雰囲気抜群の音が出てきます。
音の出し始めは「おお、これがあの教会の音か・・」としばらく聴き入ってしまいました。
ある種非常に説得力のあるサウンドだなと思うのですが、
どこか神秘的な空気感があり音面だけではなく、空間や歴史的な背景が音に深みを与えている感じがしますね・・

また各プリセットも表情豊かです。
かなり傾向が変わるものもあるので、中々触って楽しい感じですね。
音質面というと、明瞭感がありつつも倍音の煌びやかさが上品。
低音の重厚感もしっかりあり、手軽さがありながら本格的なサウンドが両立されている感じです。

細かい所ですが印象的だったのが”Reverb”のコントロールで、
値を増やしていってもサウンドが破綻しないというか、
あくまで楽曲に合わせた調整、という範囲に収まっています。
スケールが大きかったり包み込むようなサウンドが欲しければ値を多めに設定しつつ、必要に応じてマイクのレベルなどを調整する感じで非常に操作性も良いですね!
参考までにプリセット”Full Organ”のReverb値0%のバージョンと、100%のバージョンを録音しておきました。

まとめ

Shakespeare’s Church Organ は、単なるオルガン音源ではなく、空間と歴史を閉じ込めたような特別なライブラリでしょう。
ホーリー・トリニティ教会という由緒ある場所で実際に鳴らされてきた音を、自然な残響とともに高音質で収録。
独特な荘厳さと神秘的な響きは、映画音楽やアンビエントなどのシーンで豊かな空気感を与えてくれます。

また、近年のSpitfire Audioらしい使いやすいインターフェースも魅力で、プリセットを切り替えるだけで印象の異なるサウンドを即座に得られるのは、制作のスピード感を維持するためにも良い設計だと思います!

「本物のチャーチオルガンの響きが欲しい」「深みのあるオルガンサウンドが欲しい」「荘厳な雰囲気を手早く演出したい」と感じている方には、この音源はまさにピッタリです!
唯一無二の存在感と確かなクオリティを備えた逸品でした!

Rock oN ソフトウェア研
ソフトウェア愛に溢れたRock oNスタッフ達
記事内に掲載されている価格は 2025年7月08日 時点での価格となります
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