出だしからBOLDで書いちゃうけど、
これやったら即業界出禁になります(ウソだけど)。
理由は簡単に想像つくと思うけど、30〜70のトラックにClickトラックを用意する時間が勿体無い。仮にProToolsのセッション開いて、Clickトラックを別のセッションからインポートして、ミュージシャンのキューボックスに送るためのIOセットアップを変更して、EQのプラグイン挿して、ProToolsのセッションのファイル名を念の為に別の名称にして、閉じて次のセッションを開く、、、これを70回繰り返しただけでどう考えても40分以上時間かかるんですよ、休みなしでもね。そしてこれをレコーディング前に終わらせなきゃいけないわけなんだけど、仮にそのスタジオを13:00〜18:00でブッキングしたとしましょう。確かにレコーディングに必要な作業なのでスタジオのアシスタントエンジニアがやる仕事ではあるけれど、当然13:00からレコーディングは始めるのでその前に済ませなきゃいけないわけ。
クリックトラック以外にデッカマイクの高さだアウトリガーの位相のチェックだ、全楽器のマイクチェックだ、マイクにトラブルあったら別の87とか67取りに走らされるわけで(世渡り上手の、または早くフリーランスのエンジニアに成りたい賢いアシスタントの子は少なくともレコーディングエンジニアと作曲家の視界から外れる場所までは走る!)、やらなきゃいけないことは山積みでしょ?アシスタント用のスコアもめくりやすい様に折り目ガシガシしなきゃいけない場合もあるしね。だからレコーディング前にクリックの準備させる作曲家にエンカウンターしたら「あ〜こいつ何にも分かってね〜んだなあ〜」と思われないわけがない。
そう思われないために、以下の準備は最低限しておきましょう。
1)ProToolsを買うと必ずついてきます。使うか使わないかは別にしてとりあえず用意しておきましょう。ミュージシャンが「UREI Clickは嫌じゃ~」とワガママ言い出した時に即座に別の音色に切り替えられるからね。
2)UREI Click(前回書いた通りお好みで)のオーディオーリージョンを4分音符のグリッドに配置したクリックトラックを用意する。ここにこれまたProToolsを買うともれなくついてくる「EQ III」というEQプラグインをインサートしておく。そしてカーブはLPFを使ってこんな感じにしておく。UREI Clickを使ってもクリック音が漏れる時は漏れます。その際にこのEQをアクティブにしてハイをカットします。これもスタジオのアシスタントにいちいちプラグインをインサート、LFPを設定~みたいな事をさせるのは時間の無駄なので自分のテンプレートに準備しておく。
LPFの周波数ポイントはその場でエンジニアが判断するので深刻に考える必要はなし。とにかく事前にプラグインが挿入されていることが大事。
3)劇伴だとテンポが70以下になることはしょっちゅうあります。そして劇伴レコーディングの99パーセントは「ミュージシャンは初見」なので当然作曲家ほど楽曲を理解しているわけではないんです。テンポが遅いレコーディングでミュージシャン側から「8分のクリックもちょうだい~」とリクエストがあったら即座に対応できるように別トラックで用意しておきます。4分と8分をイーブンなボリュームでプレイバックした方が良いのか、8分裏クリックは少しボリューム落としてプレイバックした方が良いのか。これもトラックが別になっていればフェーダーを上げ下げしただけで即対応可能です。
3)の応用みたいな例だと、拍子が6/8でアクション系のシーンでテンポが速い時。こういう時も曲によって8分音符のクリックが6発イーブンで鳴った方がいいのか、「タツツタツツ」とダウンビート以外は弱い方がいいのかは曲によるし、ミュージシャンのリクエストに即対応した方が良いのでやっぱりトラックは別にしておいた方が簡単です。
クリックトラックのTipsもう少しあるけど長くなるので続きは次回。