ワタクシ「あの澤田」とゲストで一つのテーマを「しっかり」かつ「サクッと」掘り下げる「あのラボ」シリーズ。2回目の今回は題して「独断と偏見で今ラップ録るならこれ!(コスパも大事)編」です。
「あの澤田」はバリバリのバンドマン上がりのギタリストですが、実はHIPHOPやR&B畑で育ってたりもします。
最近、店頭でマイクの接客をする際にラップ用のマイクを探すお客さんが増えて来たなと実感しております。好みはあれ、どこの辺りのマイクが面白いんじゃないかなと、店頭スタッフを捕まえて無理やりラップをしてもらいました!
無茶振りをした手前、自分にも縛りをつけようということでトラックはPresonus/Studio Oneの純正音源のみで30分以内というタイムアタックで挑戦させて頂きました。
StudioOneの内蔵音源が想像以上に音がいいのが多かったのが印象的でした。
今回、ご紹介するマイクはロックオン渋谷店ならではの、ちょっとマニアックなラインナップで揃えてみました!音も大事、見た目も大事、コスパも大事ってのがポイントです。
・Acoustic Empire/G87
・Acoustic Empire/E04
・Vanguard Audio/V4 Gen2
・Ear trumpet Labs/Edwina
・Ehrlund Microphones/EHR-M
比較対象にユーザーが多いNeumann/TLM103も収録しました。
インタフェースにはこれまたユーザーの多いUniversalAudio/Apollo X8 Gen2を使用し、マイクプリはApolloの内蔵マイクプリ&UNISONでNEVE&1176LN→CL1Bのダブル掛けなど、なるべく皆さんが実際にやってそうセッティングにしております。
気になるマイクがあったら渋谷店で実際にお試し頂けるのでお気軽にご相談ください。
まずは歌ってくれたスタッフにいろいろ聞いてみようと思います!
澤田:さて、サクッと録音してみまして、それぞれのマイクの感想を聞く前にレコーディング中によく口にしてた、これは「録りやすい」or「録りにくい」っていう部分について聞いてもいいですか?
A:マイクが変わるとビートの把握しやすさが変わるというか。ローがふくよかなマイクはノリが悪く聞こえたりして、やりづらいです。歯切れがいいマイクの方がやりやすかったです。
澤田:確かに声って、楽器に比べて体から直接でてるから違和感ってのはわかりやすいよね。返しの音にあわせて瞬間的に調整するからテイクに影響が大きいし。もう少しだけ具体的に言うとどういう部分がポイントになりますか?
A:トランジェントが見えやすい方がやりやすいですよね!あと、ビートに埋もれないHiの質感がある方がノリやすくて、RECもすぐ終わりました。
澤田:それを踏まえて、個人的に評価の高かったBEST3と特徴を教えてください。
A:1位:Acoustic Empire/E04、2位:Ehrlund Microphones/EHR-M、3位:Ear trumpet Labs/Edwina ですかね〜!
Acoustic Empire/E04は本当にやり易かったです!EHR-Mが一番トランジェントが見え易かったですが、リアルすぎるというか、E04はちょうど良かったんですよね。
Edwinaはサウンドキャラクターが好きでした。トランジェントは上位2機種よりかは鈍く感じましたが、Midが濃密で好きでした!
澤田:ありがとうございます。
澤田:ここでサクッと各マイクの特徴をご紹介しておきます。
・Acoustic Empire/G87:U87とU67の間を狙ったサウンドで、コンデンサー特有のギラつきがなくローミッドもしっかりあり、10万以下ならまずこれを聞いて欲しいです。
・Acoustic Empire/E04:SONY C-800GのサウンドをTubeTECHのCL1Bで少し鈍らせた感じを狙っていて、今のK-POP的なアプローチにはハマりそうです。あのTravis Scottも使ってるらしいです。
・Vanguard Audio/V4 Gen2:マイク大好きの「あの澤田」がこの2年くらいなら一番ピンと来てるブランドのコンデンサーマイクです。クリアさと暖かさのバランスが抜群ですね。真空管モデルのV13 Gen2のパワー感も是非チェックして見てください。今、真空管マイク欲しいと言われたら必ず聴いてもらってます。
・Ear trumpet Labs/Edwina:奇抜な見た目から食わず嫌いされやすいですが、このブランドマイクは全機種「当たり」です。聞き慣れたSM58のサウンドから2段くらい上位互換した様なサウンドでとにかく音像の大きさがポイントです。
・Ehrlund Microphones/EHR-M: 三角形のダイアフラムで有名なブランドで、とにかくリリースの速さとモダンな抜け感は唯一無二です。発売から数年経ってますが、今年の初めくらいから急にプロの現場でザワザワして来てます。
続きまして、別のスタッフにも出来上がったデータを確認してもらい別の角度で質問してみました!
澤田:今回のマイク等ってなかなかマニアックでしたが、以前から知ってました?
B:名前は全部知っていましたが、Acoustic Empireは今回初めて音を聞きました。InstagramかFacebookだったかで「吸音帝国」って名前のマイクとして出てきて。そのまま訳すとそうなるかーってのでブランドネームのインパクトが強かったです。
澤田:普段、接客をする際に自分が提案するマイクやお客さんからの試聴依頼が多い製品ってどの辺でしょうか?
B:ラップに関して言えば、ここ数年Manley / Reference Cardioidが大定番な事もあり、売れています。ご予算に関係なく時間があれば文字通りリファレンスとして聞いて頂きます。あまりDAWでの処理に時間を割きたくない、部屋の環境からワイドレンジなものは避けたいお客様にはearthworks / SR117などハンドヘルドマイクを勧める事もあります。
澤田:その辺のマイクと比べて今回のマイクで気になった製品はありますか?個人的に評価の高かったBEST3と特徴を教えてください。
B:①Vanguard Audio/V4 Gen2、②Acoustic Empire/G87、③Ear trumpet Labs/Edwinaです。
次点でEHR-Mなんですが、これは元々私が大好きなマイクである事と、価格も今回のシュートアウトでは一つ抜きん出ているので殿堂入りとさせてください。V4とG87が録れ高が良く、DAWでの処理も「あーしてこうすればOK」とイメージできます。Edwinaはバリエーションとして持っていたい印象ですが、距離によってキャラクターが大きく変わるのが難しそうです。
S:ありがとうございました。
個人的にラップに相性のいいマイクの基準って、リリック自体もビートの一部というか、言葉の瞬発力をいかに拾えてるかが大事になってくると思ってます。
歌に比べて音立ち上がりやエッジ感、リリースのスピードなど、ビートありきの音楽だからこそ気になるポイントがいろいろありますが、ざっくり言うとノレる音が大事ですよね!
今回は独断で5本ご紹介させて頂きましたが、この他にも相性のいいマイクは色々ありますので、是非是非ご相談ください。