さて先週の続きではあるのですが、サンプラーの話に触れたいと思います。先週のプログラミングと同様、僕の世代だとサンプラーは自分でサンプリングしてライブラリーを増やすのが当然だったんです。
僕が最初にサンプラーに触れたのは、この業界に入るきっかけになったシンセサイザー・マニュピレーターである梅原篤さんの会社「タイトロープ」にあったフェアライトCM IIでした。
ファクトリーメイドのライブラリーもあったんですけど、やっぱり自分でサンプリングするのが基本で、色んなものを取り込んでみましたね。当時メモリーが少なかったからだと思うんですが、初期のフェアライトはサンプリングタイムを長くするにはサンプリングレイトを下げるという仕組みだったんです。これがまた独特の質感になって面白かったんですけどね〜。
さてその後はEmu社のEmaxやAkaiのSシリーズ、RolandのS-760等を使ってCMの仕事をかなりこなしました。そして、2002年にNative InstrumentsからKontaktがリリースされました。
でも最初のバージョンはまだKSPでスクリプト書いたりはできなかったんです。そこから2年経ってKontakt2がリリースされて、初めてKSP(Kontakt Script Processor)というものにエンカウンターしたわけですね。(この時代はソフトウェアってダウンロードじゃなくて箱にはいったCD-ROMを買って来て自分のPCにインストールしていました)。勿論英語、マニュアルは付属していますが、KSPがさっぱり分からなくて。
「Lua」が何かも全く分からず(KSPがほぼ完全なLua言語になったのはつい最近なんです)、ましてやLua言語に類似した〜みたいな事が書いてあったような気がしますけど、これもさっぱり理解できず。Luaってそのあと触り始めるMONOMEや、いろいろな音楽系アプリでも使われている言語で、実際アメリカの普通の書店のPC関連のコーナーに行くと(数は多くないけど)、「Lua入門」的な本は普通に売ってるんですよね、、、日本語の書籍だとほとんどないと思います。
その当時Windowsマシンで動くGIGA Samplerというサンプラーを使っていたので、KSPは特にそれ以上興味を持つことは無かったのですが、GIGAサンプラーの開発が止まってしまったので、Kontaktをメインのサンプラーとして使うことになりました。それからですね、KSPを少しずつ理解し始めたのは。それからYouTube上で色んなチュートリアルが紹介されて、Kontakt内のKSP Script集を使いつつ少し修正加える的な事をして普段の仕事に活かしていくことになりました。現在は特にアクション系の映画の制作に入る前にモジュラーシンセや外で録音した音を使ってサウンドデザインして、それをKontaktのライブラリーとして保存してから制作に入ることが多いです。
時は流れて2014年にLAに引っ越したのですが、LAは石を投げればプログラマーに当たるほどプログラマーがいるんです(笑)。どこのカフェに入っても2、3人は必ずコード書いてる人がいるし、日本とは随分環境が違うんだなと思いましたね。それとLAの作曲家でもKSP、Java、Python、この辺のコードを書ける人は珍しくないです。Serumにサイン波はデフォルトで搭載されていますが、「音楽的に美しいSine波形」は、やっぱりコード書いて生成しないとダメだという作曲家がいたりw。型落ちのMacにLinuxをインストールして使う人も少なくないし(僕もその友人の影響で古いMacBook AirをLinuxで使ってました)。「Hackintosh」と呼ばれる自作PCにMacのOSをインストールして音楽制作に使ってる人も珍しくなかったんです。それとあくまでも僕の周りにそういう人が多かっただけかも知れませんが、Macのターミナルを使って環境をカスタマイズするのは全然珍しいことではありませんでしたね。これも結構影響受けました。以前ほどではないですが、今でもMacを新調するとHomebrewやPythonはターミナルからインストールします。
このコーナーでもターミナルのことは触れたいんですが、自己責任の割合が大きくなるので、、、興味がある人は自分で調べて挑戦してください(笑)。
そしてサンプラーの話からそれてしまいますが、LAに引っ越してしばらくして、Arduino Unoというマイコンボードの存在に気が付き、これが自作MIDIコントローラーとものすごい相性が良かったんですね。
劇伴と言えばオートメーション、オートメーションと言えば劇伴というくらい、劇伴とオートメーションは切っても切れない間柄なのですが、僕もあれこれMIDIコントローラーを使ってみたもののしっくり来るものがなかなかなくて、Arduio Unoの発見と同時に自作MIDIコントローラーの沼にハマっていったわけです。それに輪をかけたのが家庭用3Dプリンターの登場で、Arduino Uno(すぐTeensyにスイッチしましたけど)と3Dプリンターの組み合わせはほんとやばいんですよ、、、
夏休みにロックオンカンパニーの自作MIDIコントローラー教室とか開催できればいいですね。中古で安く売られてるボリュームペダルを使ってMIDI CCを送るとかハープのグリッサンドをするとか、そんなに難しいコードは必要ないんですよ(笑)。写真はLAの電子パーツを扱っていたFry’sというお店(笑)。残念ながら2021年に閉店したそうです。よく行ったなあ〜