Massive Passive はパッシブ設計であり、真の意味での「パラメトリック」ではありません。パラメトリックEQのコントロールは相互作用することはありませんが、Massive Passive の "GAIN" と "BANDWIDTH" は(あえて)作用し合うようになっています。このため私たちは "GAIN" を一貫した1/2ステップ刻みのスイッチにすることはできませんでした - これは "BANDWIDTH" を変更した際に、そのステップサイズも変化するためです。
通常バージョンの Massive Passive では、ベルモードでバンド幅を時計回りに回しきった(最も狭くした)際、あるいはシェルビングモードでバンド幅を反時計回りに回しきった際にのみ、最大 20 dB ブーストまたはカットを行うことができます。
一方、マスタリングバージョンでは最大のブースト/カット量は 11 dB となります。逆の設定をした場合、ベルモードのバンド幅最大時のブースト/カット量は 6 dB で、最も狭いシェルビングモードのバンド幅では 12 dB になります。同じことが "BANDWIDTH" の設定にも言えます。つまり、このマスタリングバージョンでは目盛通りの確実なdB設定を期待してはいけません(これはバンド幅によって変化するためです)。ただし、いかなるステップ幅であろうと、これは16ステップ式スイッチになっているため、(記録を取ってさえいれば)設定の確実な再現が可能です。"FREQUENCY" 設定もステップ刻みになっており、シェルビングモードでは相互作用が起きます。
同じく注意すべき点として、Massive Passive は「パラレル設計」であり、従来の直列設計ではありません。このことは、各バンドが作用し合うことを意味しています。例えば、ある帯域を 20 dB ブーストし、別のバンドで同じ、あるいは近い周波数を選んでブーストを行った場合、その部分の音量はほんのわずかしか持ち上がりません。通常の「直列」仕様のEQで同じことを行った場合、その帯域は 40 dB ブーストされ、信号過多となります。つまり、バンドの周波数設定が作用し合うため、ステップサイズによる効果を予測するのは現実的ではありません - 良いサウンドのEQ処理が行えた時にパネルの状態を見てみると、もしかすると通常のEQでは見られないような設定になっている場合もあるかもしれません。
Massive Passive は他のどのEQとも異なり、EQを施した際のいわゆる「処理感」はあまりしません。つまり、5 ~ 6 dB 程度の設定においても、他のマスタリングEQより積極的に扱うことができるのです。思っている以上にイコライジングを施しても自然な結果を得ることができるので、熟練したエンジニアでさえも驚くほどです。開発初期の段階では11ポジションの Grayhill スイッチを導入し、1/2ステップにすることも考えられましたが、それでは最大で 5.5 dB しか得ることができません。前述の説明を思い出してください。この場合最小レンジが 1.5 dB となり、ステップサイズはおよそ 0.2 dB になります。なお、このマスタリング・バージョンでは、特別に設計された精密なステップ式ノブが採用されています。設定を完璧に再現することができるのが Massive Passive マスタリング・バージョンの特徴のひとつです。
マスタリング・バージョンのマスターゲイントリムは、11ポジション、1/2 dB ステップの Grayhill スイッチを使用し、-2.5~+2.5 dB の範囲で正確に設定できます。これにより左右のレベルマッチングを精密に行うことが可能です。
また、マスタリング・バージョンでは言葉通り「マスタリング用」としてカスタマイズされたフィルターを装備しています。もし、電話音のようなドラスティックな効果を求める場合には、通常バージョンの Massive Passive をお勧めします。
15 kHz、20kHz、27kHz、40kHz (18 dB / octave)
52kHz (30 dB / octave)
OFF
ハイパスフィルター
12, 16, 23, 30, 39 Hz (18 dB / octave)
OFF
通常バージョンかマスタリングバージョンかを決めかねている場合、まずは通常版の Massive Passive を実際のセッションでお試しになられることをお勧めします。なお、これまで経験したEQを想像しないでください。とくに Massive Passive をこれらの代替え品として考えるのは完全に間違っています。お試しいただければ、すぐにこの意味がお分かりになるでしょう。
既存の通常バージョンを後からマスタリング・バージョンへ改造することはできません。その逆もしかりです。
今回より新たに設計されたパワーサプライ、MANLEY POWER®が搭載されました。これはManleyのプロオーディオ機器のために特別に設計されたスイッチモード電源で、ブルーノ・パッズィースが率いる電源技術の世界的なエキスパートチームが手掛けた、革新的な設計により誕生しました。
既にManley CORE で採用され、音響的にも優れていることが実証されているこのパワーサプライは、チューブを駆動させるための300Vの高電圧DCレール、それらのチューブのヒーターへ電力を供給するための容量十分な6Vライン、そしてファンタム電源やその他のソリッドステート回路のためのいくつかの電圧レールを備えています。
高周波ノイズを極めて低くした設計によって、すべての電源ラインがしっかりと安定し、低インピーダンスで効率的、しかも極めて静かです。もちろん余裕のあるヘッドルームに高電圧は不可欠であり、それは音響性能の向上にも寄与しています。Massive Passive Stereo EQ の素晴らしい音響性能は、この優れたパワーサプライから得られます。
入出力 | 入力 : バランスXLR、バランス1/4インチ(アンバランス接続にも対応) 出力 : バランスXLR、アンバランス1/4インチ |
---|---|
レベル | +4 dBu(公称値) |
バイパススイッチ | EQと真空管回路をバイパス(ハードワイヤーバイパスではありません) |
周波数設定段階数 | 44段階の周波数設定(およそ1/4オクターブステップ) |
周波数範囲 | 22 Hz~27 kHz |
EQブーストカット最大範囲 | ± 11 dB |
Q | 1.5~3(シェルビングモード時は特別作用をもたらします) |
最大出力 | @ 1.5% THD +37 dBv; +26dBv @ 20 Hz |
周波数特性 | +/- 2 dB、8 Hz to 60 kHz |
THD +N(1 kHz サイン波 @ +4dBu、BW 22 Hz~22 kHz) | 0.006% |
ノイズ(リファレンス +4 dBu) | -85 dB(A-Weighted) |
ダイナミックレンジ | 120 dB |
入力インピーダンス | 20 kΩ |
出力インピーダンス | 150 Ω |
真空管 | 12AU7 x2、6414 x4 |
電源消費 | 44W(120 / 240 VAC) |
動作電圧 | 90~254 VAC @ 50~60 Hz(ユニバーサル電源) |
仕様は予告なく変更となる場合があります。 |
スタッフコメント