Q2 Audio社は、Vintage Kingのヘッド・テクニックを担当した経歴を持つTim Mead氏がオーナーを務める米国のメーカーです。
同社が扱うF760X-RS及びF765は、1960年代からHelios社やCalrec社などのカスタム・コンソール製作の為に基盤を供給していたAudio Design & Recording社の伝説的なコンプレッサー&リミッター 「Compex」 をルーツとしています。
ADR社のもとで誕生したFETゲインリダクション回路採用ダイオードブリッジ式リミッターであるCompexのサウンドは、Led Zeppelinの楽曲”When the Levee Breaks”に聞くことができます。
「究極のドラムサウンド」とも称されるJohn Bonhamのグルーヴの一端は、このAudio Design & RecordingのCompexが担っていました。
”When the Levee Breaks”の他にも数多くの楽曲に用いられ1970~80年代のヒット・レコードの立役者となったCompex、この長い歴史と実績に裏付けられた名声を手にしたクラシック・コンプレッサー&リミッターのリイシューをTim Mead氏がQ2 Audio社において実現させました。
デトロイトでは名の知れたテクニックであるTim Mead氏はCompexのリイシューに際しての再設計をADR社にもちかけ、現在のQ2 AudioバージョンのF760X-RS及びF765が誕生しました。
回路デザインの変更にあたっては、いくつかのポイントにおける電圧調整とDCパワーデカップリングを行い、ノイズ対策に対してのみ現代的なデザインに更新し、ほぼ全ての回路で当時のオリジナル・デザインが採用されました。
F760X-RSとF765の2機種の生産は、アメリカ合衆国ミシガン州ロイヤル・オークで行っています。
Compexのコンプレッサー/リミッター回路の500シリーズ・サイズ コンバージョン・モデルとしてリリースされたF765の信号回路には、Compexと同様のPhillips製のブルー・キャパシタとBCシリーズ・トランジスタを採用しています。
BCトランジスタの音色は独特で、日本製2Sシリーズや米国規格2Nシリーズとは一線を画します。
電気特性上ではよりコストの安い他規格に置き換える事ができますが、敢えてそれをせずにオリジナルの型番にこだわったのは、あくまで当時の性能を再現するためでした。
これにより、ノイズ対策部分以外はほぼ当時の音色と性能を再現したF760X-RSと500規格モジュールであるF765が誕生したのです。
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