• 2015.07.03

Roland JD-XAが放つ新生Rolandの咆哮【Special interview】


150702_magazine_roland_topRolandとしては実に約30年ぶりとなる、アナログ回路を採用した『JD-X』シリーズ。1985年に同社発売のJX-10以降、熱望され続けてきたRolandアナログシンセサイザーの復活はなぜ『今』だったのか。そして、どのような経緯を経て、JDは再びその姿を表すことになったのか。今回のインタビューでは、同社JP-8000発表当時にRoland株式会社へ入社し、最新ワークステーション「FA」シリーズやJD-XAの開発を行った同社第一開発部製品リーダー 山里 尚和 氏、共に製品プロモーションを手掛けた営業推進部シンセグループ主任 石井 宏平 氏を交え、JD-XA誕生の真実に迫った。そこには、かつてアナログとデジタルの岐路に立った『JD』という名の目指す次なる未来が描かれていた!


JD-XA_image_tmp

特徴

JD-XAは、アナログ・シンセならではの音の質感と、デジタル・シンセが持つ多用途性を一台に凝縮したシンセサイザー。4つのアナログ・パートは、JD-XAのために新規開発。フィルターやアンプに至るまで、すべてがアナログ回路によるサウンド。デジタル回路を一切通さずに音声を出力できるアナログ・ドライ・アウト端子も装備しています。

4つのデジタル・パートにはSuperNATURALシンセ・エンジンを採用。煌びやかなPCMサウンドやSuperSaw波形による分厚いサウンドなど、デジタル・シンセならではのサウンドを提供します。

アナログとデジタル、この二つのエンジンはサウンド・クリエイターの発想に応えるフレキシブルなルーティングを実現。

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SPEC.

・鍵盤: 49 鍵(ベロシティー対応、アフタータッチ付き)

・最大同時発音数: アナログ・パート= 4 音・デジタル・パート= 64 音(音源負荷に依存して変化)

・構成:
アナログ・パート= 4 パート(2OSC+1AUX、1Filter、1AMP、2Pitch ENV、1Filter ENV、1AMP ENV、2LFO、1MOD LFO)
デジタル・パート= 4 パート(3 パーシャル〈3OSC、3Filter、3AMP、各エンベロープ、各LFO〉)
※ デジタル・パートはSuperNATURAL シンセサイザーでIntegra-7 互換です。

・オーディオ接続端子:
PHONES 端子=ステレオ標準タイプ MAIN OUTPUT 端子(L/MONO、R)= TRS 標準タイプ
ANALOG DRY OUTPUT 端子=標準タイプ
CLICK OUTPUT 端子=ステレオ標準タイプ
MIC 端子=コンボ・タイプ(XLR、TRS 標準)/バランス
USB COMPUTER 端子(USB Hi-Speed AUDIO / MIDI 対応):
USB B タイプ(パソコンのUSB 端子とUSB ケーブルは、USB 2.0 Hi-Speed 対応のものをお使いください。)


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ローランド株式会社
山里 尚和 氏
JP-8000開発当時の1994年にRoland株式会社へ入社し、新製品JD-XA開発を行った同社第一開発部製品リーダー
ローランド株式会社
石井 宏平 氏
INTEGRA-7、FAシリーズ、JD-Xシリーズなどの製品プロモーションを担当。

 

引き継がれるRolandピュアアナログヒストリー

R:本日はよろしくお願いします。まず今回のJD-Xシリーズでは本体内にアナログ基板とデジタル基板を内蔵し、アナログシンセサイザーサウンドとSuperNATURALシンセサイザーサウンドを自在に組み合わせる『クロスオーバーコンセプト』が採用されました。新製品JD-Xシリーズが出るまで、長い間ピュアなアナログシンセ開発にRolandは手をつけてませんでしたよね。それこそ当時アナログシンセサイザーの開発を最後に行ったのはいつ頃だったでしょうか?

山里:1986年のJX-10あたりだと思います、D-50が出た頃がちょうどデジタルへの過渡期で、およそ約30年前ですね。

R:30年…感慨深いですね。その頃山里さんは入社何年目くらいですか?

山里:20年ほど前なのでJD-800、JP-8000の頃に社内に入りました。

R:なるほど、会社の開発方針もあると思いますが、その間お二人はどういう風にアナログシンセサイザーを捉えていたのでしょうか?

石井: 常に新しい楽器の可能性を追求していこうという会社の方向性がありましたので、デジタル・オンリーで歩み続けた30数年間もその方向性は継続されています。

R:意図的にアナログの開発は止めるとかそういうことがあったのではないですか?

石井: いえ、そういう理由はありません。D-50等でデジタルに集中しだしてから程なくして、デジタルになって多くのシンセが画面を見ながらボタンを操作する、という形になってきました。その一方でやっぱりつまみを使って音作りができるというのがシンセサイザーの良さという意見もありました。そのころからJUPITER-8のようなものをもう一回出して欲しいっていう要望が出始めていました。それはもう今に至るまでいただいてますね。

R:そうですよね、私もデジタルと同時にRolandアナログのリリースを当時から期待していました。ところでサードパーティも含め当時開発を行っていなかった間アナログシンセ自体のリリースは減っていた状況だったのでしょうか?

山里:海外メーカーを中心に細々とは続いていましたので、全くない時期っていうのはないと思います。海外、特にヨーロッパはこの市場が強くて、ずっとリリースを続けていたDave smithさんは今でもシェアの伸びがあるように感じています。そういった状況や、エンジニアも外に出て現場の話を伺おうという社長の三木からの新しい方針もあり、私自身もヨーロッパに行って現場を見てきたのですが、現地でのユーザーのニーズはやはり伸びていると実感しました。その一方で、我々がそういうことから離れていたということにすごく危機感を覚えたんです。

history_roland_07_f2s_03

R:それは何年頃の話ですか?

山里:それが2013年ですね。企業としても方針が大きく変わった年です。

R:当時からRolandは回帰することなく前に行くということも言われていたので、正直アナログは過去っていう認識を我々も持たざるを得なかった状況でした。

石井: 正直私達にもありました。しかしアナログの良さっていうのも同時にわかっていて、それとRolandならではのデジタル技術を掛け合わせることができれば、それはきっと新しい音であり、新しい音楽になっていくと思います。一方で、Rolandはもうアナログ・シンセを作る技術を持ってないのではないか、できないのではと言われていて、「じゃあやってやろうじゃないか!」という思いが我々にもありました。実際にJupiter-8をの開発に携わっていた社員もまだ勤続していましたので、アイデアなどを共有しつつ、アドバイスをもらいながら。開発している最中に退職した当時のスタッフも出てきていたので、今回のタイミングでなければできないと思いました。JDXA_inner

山里:開発前は社内でも反対意見はありました。しかし、私自身この製品で表現したいサウンドや背景、何よりアナログシンセサイザーであることの意味に譲れないものがありました。社内で一人一人を説得して回り、今回開発まで持っていくことが出来ました。

R:まさにRolandヒストリーと開発に携わったスタッフ一人一人の情熱がこもった新製品なんですね。アナログシンセの歴史を振り返ると最初のフロンティアはやっぱりMOOGさんだったりとか、Dave smithさんだったりとか、、Roger Lynnさんらの面々がスタジオのハイエンドは押さえていて、その歴史の中に当時Rolandさんが出てきた印象でした。今のJDがアナログヒストリーとして当時のジュピターから引き継いだものとはなんだったんでしょう。

石井: 極端に言えばJD–XAはメモリー付きのポリフォニックアナログシンセサイザーと言う意味でjupiter-8とそれほど変わりはないのです。細かいところは色々違いますが、デバイスが最新になってるだけで大きく捉えれば一緒です。引き継いだというよりも、結局そこに行き着いてしまうという印象です。JDXA2015_7_2

山里:ただ、大きく違うのは今は高性能なDSPが使えるので、当時ではできなかったような振る舞いはできます。超低速/超高速のLFOとかはJupiter-8には搭載できませんでしたが、今回JD-XAはやろうと振り切りました。結果破綻する状態も出たりするんですけど、それはそれでよしとして今回作ってます。とにかく素早いレスポンス、エンベロープや高速LFOっていうのは難しい。それをアナログでやるなら絶対やらないと意味がないと思い、できないものは作らない!という志からスタートしてます。

R:それが逆に言うと今回新しい提案になっている。

山里:はい、シンセの太い音を出そうと思ったら、やっぱり一つ一つの挙動が素早い、スムーズである、という要素が集まることによって結果的に太い音になるのです。アナログ回路の音質だけじゃなくていかにアナログ回路を振舞わさせるかという制御ですね。JD-XAは相当パワー掛けてやってます。

R:確かに従来製品とは一聴してわかるレスポンスの気持ち良さと追従性があります。これは御託抜きに誰もが触れば体感できますね。

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クロスオーバーコンセプトが目指すもの

R:Rolandが今アナログシンセを作るにあたり目指すサウンドは見えているのでしょうか。

山里:太くて存在感のある音が作りたいというテーマがあって、それはベースであったり、リードであったりしますが、今回キーボードの形をつくることになってたので、プロのキーボーディストの方が即戦力になる音が出せるものを目指そうというテーマがありました。

R:王道はしっかりおさえてということですね。例えば音楽的にこういうジャンルに使うなどの想定はあったのでしょうか?

石井: それは、逆に持たないようにしました。それは使い方なので、僕らが縛るものではないと考えています。

R:なるほど、でもキーボードの形が出たら、流石に次も考えてらっしゃるかもしれませんね(笑)。回路をアナログだけにしなかった理由は何故なのでしょうか?

JDXA2015_14__1山里:はい、復刻の要望が多かったんですけど、Rolandは新しいものを作るというイメージが強いと思うので、得意なデジタルとアナログを組み合わせた先に新しい何かが、今ならできるんじゃないかというリクエストを多くもらってたのです。
やっぱりそういう期待感あるんだな、じゃあ僕ら自身も新しいものを作りたいっていう気持ちも強く、それはひとつのDNAじゃないかなと思います。デザインも実は最初はもっとアナログ・シンセらしい外観や質感だったのですが、よくよく考えるとそれこそ回顧主義的に見えてしまうので、サウンドと同じく新しい方向へ振りました。新しい物にしか見えないように。

R:同じような提案はアナログ回路だけでできなかったのでしょうか?

石井: 今回プロの方に使っていただきたいっていうのもあって、アナログだけでも、デジタルだけでもできない音作りを新しい提案として盛り込んでいます。例えば、デジタル・パートの音をアナログのフィルターで加工したり、アナログのオシレーターをデジタルのオシレーターで変調させたり。というところで新しいシンセサイザーという楽器にできるのではないか、というのがかなり初期の段階からありました。それに、デジタルでもアナログでも、複数パートを同時に使えるマルチティンバー仕様にもしたかったというのもありました。

R:我々はアナログシンセについては楽器のジャンルではないかと捉えているのですが、どうでしょうか。デジタルが入った瞬間にあるジャンルから外れる気がしてて、持ちたいと思うのはピュアアナログで、そういう趣味性を高めると長きにわたって所有していく重厚感もあると思うんですよね。わかりやすさって意味ではハイブリッドじゃないものの良さはあるとは思っていて、懐古主義って言うよりはジャンルなんじゃないかなと思っています。

石井: そういう意見もわかります。JD-XAでは、いわゆる”シンセサイザーの音”がフィーチャリングされたワークステーションというイメージもありました。アナログ・シンセであっても、単音で鳴るよりアンサンブルで鳴る方が楽しいですから。

R:JDを発表後、国内の評判、海外の評判はどうでしょう?

石井: このあいだのフランクフルトなんですけど、アナログシンセサイザーはヨーロッパ方面で根強い人気ですよね、かなり反応が良く、試奏の行列ができましたと聞いています。終わった後に現地スタッフと話したところ最初に「ごめん、パネルの指紋を拭く暇がなかった」と言われました(笑)。

R:大盛況だったんですね! 評価評判についての具体的なコメントはどうですか? また想定しているユーザーの年齢層は?

山里:はい、クロスオーバーコンセプトっていうのが受け容れてもらったという印象が多いですね。比較的年齢は高いんじゃないかなと、40代前後かなって思います。価格設定の部分もありますので。

石井: 勢いで買っちゃう若者っているじゃないですか、自分はプロになるんだと。そう言う人が何か買おうとした時に昨今のRolandのシンセって選択肢になかったと思うのです。AIRAはAIRAでいいものなんですけど、比較的手が出やすいし、みんな持ってるとなると、価格は高くてもいいものを持つってことで自分を高める、という若者もいると思うのです。そういう層には手に取ってほしいなと思います。

JDXA2015_24__3山里:今回CV/GATE OUTをつけたり、内部音源8パートに加え外部音源をコントロールするためのExternalパートも備えていています。全16ある各パートにはそれぞれシーケンサーのトラックも付随しているので、例えばJD-XAのアナログ・パートとデジタル・パートを鳴らしながら、ExternalパートではDAW上のプラグイン・シンセを鳴らすこともできるのです。ハードウェア・シンセでプラグイン・シンセをコントロールするというのは、小室哲哉さんなどをはじめベテランのキーボード・プレイヤーにもかなり浸透してきていると感じています。

R:そうなんですね、クロスオーバーにした瞬間に割と若い層に受け入れて欲しいと思っているのかなと思ったのですが。

山里:いえ、曲を作られているクリエイティビティの強い方に満足してもらえるものを作ることも目標だったのと、従来のコアユーザーに受け入れてもらうことも考えています。

石井: 楽器からインスピレーションを高めてくれる人っていると思うんですよ。楽器に振り回されるんじゃなくって、プラグインできないからやらないじゃなくて。できないんだったらこうやってやろうっていう人。そういう人って年齢というよりもマインドだと思うんで、そういう人たちは割と手を出してくれると思ってます。

R:なるほど、サウンドイメージを最初から作れる人で、最初から頭に楽曲描けるような人が音を創作するときに持ってくるイメージですかね。

山里:もちろんシンセ自体に詳しくない人でもいい気がするんですよ。結果として操作しやすいからいい音が出てきたとか、シンセのロジックはわかってなくても結果としていい音が出てきて作品に活かせるみたいな。

石井: 例えばNordleadとかVirusはVAですけど、あの音がよければこだわりなく使われる。やっぱりそういう声があるっていうのはわかってました。ぼくらもアナログとかデジタルとかこだわりなくいい音出たらいいと考えています。

R:クロスオーバーの回路はDave Smith社のTempestにあるようなハイブリッド仕様とちがうのかなって思ったんですけど、そこはどうでしょうか

山里:ハイブリッドという言い方もできたのですが、まずすでにDave smithさんがオシレータがデジタルでフィルターがアナログっというものをハイブリッドって呼ばれていたので、JD-XAで考えた構造や融合させたいというイメージとは別のものになります。それにJDは今回デジタルシンセの音を丸々もっていて、アナログも持っていて、その音を組み合わせて使う、「融合」というところが特徴ですので「クロスオーバー」がぴったりだと思いました。

XA(クロスオーバー・アナログ)だけが到達するサウンド世界

R:クロスオーバーについて伺います。オシレータをデジタルとアナログ双方一緒に出せるだけじゃなくて、モジュレーションしたりも可能なんですよね。

山里:そうです、アナログのオシレーター・フィルター・アンプ、デジタルのオシレータ・フィルター・アンプ、これらをそのまま全部持っているシンセって今までありそうでないんですよ。デジタルのオシレーターで作った音をアナログのフィルターにルーティングできるのが特長の一つで、アナログ・パートのOSC1,2と並ぶ形でデジタルパートの音が持ってこれます。ここにはデジタル・パート以外にも外部入力やノイズなどを選択することもできます。ここに入ってきた音をオシレータのクロスとかリングのモジュレーションソースにできるんですよ。

R:それは面白い!

石井: マイクの音をモジュレーションソースにすることもできるので、声や別のシンセ、それに2ミックスのオケデータなどで試してみるのも面白いですね。

R:ありそうでないですよね。デジタルとアナログをクロスさせる部分で実際作ってて難しかったところはありましたか? 似たようで無い構造じゃないですか

山里:やはり二つの回路を音として混ぜるときですね。双方の音量バランスの中で実はいろんなところに出していないレベルがあり、折り合いつけるのに苦労をしました。従来だと破綻なく作るのが割とRoland的なんですけど、今回はLFOしかり振り切ってこれまで聴いたことのある範囲を超えるところまで行くようにしているので。

石井: デモ演奏を行うときは割と大変で、ある音をこの音量でこう使いたい、違う音はこの音量でこう使いたいというときに、例えばフィルターの動きをフっと切った時とか、妙に音量が上がる。PAさんとか大変なんだろうな、、って(笑)でもそれでカッコイイからいいだろうって。PAさんここだけ上がりますからお願いしますみたいな。5月に行ったJD-XAの製品発表会もここが大変でした(笑)このフィルター絶対聞かせたいからデモで入れようと思ったのですが、まぁまぁ暴れるんです(笑)

JDXA2015_25_3山里:今回、アナログ・フィルターを3種類も搭載したっていうのが大きくて、複数種類持っているということでこのようなチャレンジな仕様ができたと考えています。例えばこの暴れる方のフィルターをかけたいっていったときにデジタルで作りこんだ音にアナログフィルターをかけることもできるのです
この様な激しく変化するアナログ・フィルターのいいところって、コントロールしきれないところだと思います。だから直感的に感じるんだと思います、「この音ヤバい」って。実際コントロールできないんですよ。このスムーズな追従性って、一回つまみの動きをCPUの取り込んで 回路に反映させるんですけど、このスピードが非常に重要で、Jupiter-8からずっと基本は一緒ではあるんですけど、スピードには相当こだわりました、ここまでの追従性のあるアナログシンセっていうのはまだ世界にこれだけだと思います。

石井: 従来のシンセサイザーはもっと途中の音が飛ぶと思うんですよね、激しさはあってもきちんと付いてきた激しさじゃない。特にJD-XAはピッチの追従性が相当すごい。

山里:JDもツマミを触りながら、あれ?まだここで(つまみの位置が)12時方向なの?みたいなことが多くて。もっといけるもっといける、、いやもう行けないだろ、と思ったらまだ3時方向みたいな。なので体感のある人、いままでLFOを捻ったことがある人だったら、、、、必ずニヤッとすると思います。
この回路に使用したのは高価な部品なんですが、初期設計の頃にその部品のリソースを使いまわしてテストしていた時、実験的にもう一個つけたらあまりに追従性が違っていて、もうそれを体感してしまったら僕自身が我慢できなくなって、2個つけちゃったんです。
一同:(笑)

R:この追従性とサウンドへのフィードバックは本当に病みつきになりますね。今回Dry outってアナログ回路のダイレクト出力をつけましたが、これって周波数特性って実際どうなんでしょう、ものすごい高い50kHzとか出てるのでしょうか?

山里:アナログなのでどこまでも出ますが、ものすごい高い周波数は切っています。実際そこまで使うかはともかく素直に聴きたいというのはあると思うんですよ。

R:なるほど、クリエイターもこだわったアナログをデジタルに取り込む流れでいつも仕事をするから、出てる音をアナログかどっちか選べるというのは気になるところですよね。

石井: そうですよね、今回JD-XAとJD-Xiを一緒に出そうという話もあったんですけど、、

山里:そう、実はJD-XAを先に始めてたくらいなんですけど、やっぱり時間がかかりました。

石井: JD-Xiは若い層に試してもらいたい製品。アナログというワード自体がブランドだったりするので、そういう要素でアナログのオシレータとフィルターがあってもいいという発想としてあるんですね。それでも従来のハイエンドシンセサイザーが持つアナログの出音とかわかる人はおそらくこれでは満足できないので、JD-XAを用意しています。

R:やっぱりそうですよね。JD-Xiに関して最終的にデジタルででてくる部分のクオリティはあげようと思えば上げられるのでしょうか?

山里:それはそうです。ただ楽器なので、例えばDAコンバータの性能を上げたからいいかというと、オーディオ的な性能はいいと思うんですけど、楽器的な良さは別だと思います。DAコンバータのアナログ部分の特徴っていうのが周波数特性に現れなかったりする。我々も試してみて、いいと思ったものを選択する。それが必ずしも高い部品とは限りません。

R:シンセの音も同じで、そこのグレードは予算があればあげることによって随分違うアウトプットしそうな気がするんですけど

石井: さらにずっと上のものを作るとなったら、そういうアウトプットを持ってもいいと思います。

R:なるほど、Too muchになる可能性もありますしね。現行のユーザー環境との親和性はどうでしょう?

山里:外部音源やDAW上のプラグインをコントロールするMIDI Controlボタンを備えていて、ワンタッチでJD-XAの内部音源と行き来ができます。
もちろん、JD-XA本体のコントロール情報をDAWでMIDI録音しておき、それをJD-XAに返して鳴らすということも簡単にできますね。マウスで”書く”より、音楽的な動きで記録できるのではないでしょうか。つまみに好きなCCをアサインできるのでこれで外部音源やプラグイン・シンセの様々なパラメーターをコントロールすることもできます。さらにトリガーモードというのを設けてまして、16個のボタンを押してCCやノート情報を出力することもできます。極論1万円のコントローラーでもできることかと思うんですけど、ちゃんとそういうところは押さえるべきかなと。

R:柔軟ですね。収録サウンドはどうでしょう?

山里:80年代~90年代のRolandデジタル・シンセが好きな人にはグッと来る音が波形レベルで入っているのがポイントです。生々しいアコースティック楽器の音は敢えて入れず、デジタルであっても個性が感じられる名機の音が並んでいる、という感じですね。

R:JDピアノとかニヤリとするプリセットはしっかり入ってますね。フィルターの種類はどうでしょう?

山里:今回アナログの方で3タイプ、1番目は過去のRolandアナログ・シンセで使っていたRolandらしい回路構成に近いものになります。で、2番目はトランジスタラダーで特にシンセ・ベースなどに最適なフィルター。3番目が、ローパス、ハイパス、バンドパスのマルチモードフィルター。マルチモード・フィルターという形はRolandでいえばSYSTEM-700でも採用されていた形。ただJD-XAのマルチモード・フィルターは、新規開発のレゾナンスによりかなり個性的な音が出せるようになっています。ぜひレゾナンスをグッと上げてカットオフを動かしてみてください。

JDXA2015_16__1R:入出力にはCVゲートがついてるのも見たんですけど、特徴のフィルターだけ外部シンセで使えるっていう、そういう機能はないんですか?

山里:2系統あるCV/GATEは今回OUTのみとなっています。ただマイク入力からオーディオ信号をインプットしてフィルターを掛ける、といったことは可能です。

R:外部入力で活用できるわけですね。MIDIのCV コンバータとしてはどういうイメージで活用するのでしょうか

山里:二つのCV/GATE OUTがありますが、それぞれ個別にMIDIチャンネルを設定できます。例えばCV/GATE OUT 1をMIDIチャンネル9、2をMIDIチャンネル10に設定しておけば、そのチャンネルに来たノートでCVを出します。JD-XA本体のパターン・シーケンサーに打ち込んだMIDI情報でCV/GATE先の音源を鳴らすこともできます。もちろん、接続するアナログシンセに合わせてチューニングも行えます。

R:CV自体は1種類ですか?KORGさんのやつとかは動かないのでしょうか

山里:そうですね、動かないです。Rolandでは1機種だけ同じ方式のものがありますけど、基本的には1オクターブ1Vのタイプで作ってきているので、そのタイプで作っています。とはいえ、他社さんの製品でも動くものが多いと思います。

R:CV INとか持ったガジェット系がいっぱい出てきていて、それをコントロールするっていうのも面白いですね。

山里:そうですね、今出ている現行のアナログシンセ、Dark Energy2とか、ああいうものと使うイメージです。ゲートも5Vに限定してます。

R:連携という点で、内部シーケンサーでアサインできる情報はどうでしょう?

石井: パターン・シーケンサーにはノートだけでなくつまみの情報や各種CCも記録できます。プリロードの音に関してもCCの入ったものもあり、外部音源を接続して走らせると凄い音になることもありますよ。
一同:(笑)

R:先ほどの話ですが、アナログ回路搭載で16トラック!?

山里:内部音源8パート、外部音源8パートで、ぞれぞれにパターン・シーケンサーのトラックが付随しています。まずアナログが4パートあります、これはこれはモノフォニックのアナログ・シンセが1個ずつ4パート入っていますが、Poly Stack機能を使うことで4ポリフォニック×1パートとしても使えます。デジタルの方も4パートあって、こちらはSuperNATURALシンセ音源を使っています。これとは別にコントロール用のパートが8パートでそれぞれに対応した計16トラックです。

R:ワークステーション級ですね! シーケンサーのステップごとにCC変えるとかっていうのは?

石井: できます。ボタン押しながらの操作でできます。いままでやれそうで諦めていたものは、今回かなりやったつもりでいます。マニュピレーターされてる方からも今回逆に言われました。いままで諦めてたこと全部やってるねと(笑)

山里:結構以前から、ここはこうだったらよかったのにね、って言われるんですよ。もう慣れっこなんですけどね(笑)。今回は詰めを甘くしない、できることは全部いれるっていう姿勢で作りました。

石井: これできないよね?ってと聞かれても。いや、できますよ(ドヤ顔)とさも、当たり前のごとく(笑)
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目指したのはアナログ回路を備えた『現代型』ワークステーション

R:全体的なJD-XAの機能面を見てると、他社製品ではElektron analog keysなどが近い仕様で思い浮かぶのですが、設計時にサードパーティーを意識されたりはしたのでしょうか?

山里:Elektronのanalog keysが出てきたときには既にJD-XA構想はあったんです。出てきたときは似たようなこと考えてるなと最初は思いました。ただ触って感じたのが、ElektronのAnalog Fourなどから入った人にはサッと使えるけど、クラシックなシンセから入る人は結構大変じゃないかな、ということでした。

石井: JD-XAでは、いわゆるFANTOMとかではない、いわゆるシンセの音だけで創られる世界観が好きな人のためのワークステーションができたらいいと最初から話してたんです。

山里:僕がこれを思いついた時、FAの開発もしてたんですけど、ワークステーションはキーボードが定番だったりしました。その反面ツマミシンセで音楽を作りたい要望を持ったクリエイターが増えてると感じるところがあって、もう一本似たような全く違うユーザーインターフェイスがあってもいいと考えました。

R:それはみんな同じだと思います。ワークステーションっていうと、やっぱり面構えがシンプルになって、つまみが減ったエレガント面構えで、触りにくいなと思ってたんです。つまみが沢山ついてて楽器寄りのワークステーションはすごくいいと思います。

山里:はい、現代のワークステーションってこういうものなんじゃないかなという感覚があります。

石井: 昔のワークステーションは例えば同時発音数が32とか、トラック数が8しかないとか、制約があった。だからこそ工夫をこらして出てきた音楽もいっぱいあったと思います。今は制約があるようで実質全くない、まっさらな画用紙とペンを渡されたけど、何もできないという印象です。これが例えば16ステップ4小節の64ステップしかないという中で、いろんな発想で、じゃあこういう風にしてみようかな、って音楽を作る。それは今の音楽とすごくマッチしてると感じます。

山里:音楽を完成させるのは今時誰もがDAWだと感じていました。でもその前に、誰しもフレーズとか、アイデアを何かで考えると思うんです。JD-Xはそういうものにしたかった。ピアノだったり、鼻歌だったりToolは様々だと思いますが、プロの方と会話していて、「どんなきっかけで生まれるんですか?」とみなさんに聞いて回ってたんです。発想の元にしていただけるようなものを作りたいと思いました。

R:多様性のなかで本当のフラッグシップの棲み場所みたいなものを見つけてきたということですね。

山里:はい、楽しい要素がないと意味がないかなって。作業にしたくない気持ちがすごくあるんです。プロの方はもちろん、アマチュアの方でも実は似たような事をしていて、ただ形に残さないだけなんです、アマチュアの人は。「あー楽しかった」と書き込みもせずに電源切ると思うのですが、まさにそういう遊び方がJD-XAできると思うんです。そういう方にも楽しんでもらいたいと思っています。持ってるクリエイティビティの、レベル差はあるけど案外思いは一緒なんじゃないかと。

R:モジュラーシンセも「こんな音が出たー」って楽しむ人が多くて、確かに残さずにに終了ってなってる。そういう人も使えるかもしれない。今回デザイン面でも率直に予想してないのが来たと思ったんですよ。なんか新しいの来たって。ガジェットでも木枠でもない。

山里:デザインは実は他社さんとのコラボなんです。JD-XAを作るときに外のデザイナー『SITE4D』さんというIT系に強いところと組んでデザインしました。

R:そうなんですね、デザイン領域はどの程度まで新しいんですか?

山里:ほとんど新規です。変わってないのは鍵盤くらい。

石井: プロモーション動画しかりですが、シンセサイザーってやっぱりスペーシーなイメージがあると思います。宇宙空間の中にいろんな星があるイメージ(笑)特にRolandは星のイメージありますよね。

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R:確かに。『FA』もしかりですが最近なんでカラーが赤いんですか?

山里:FAをデザインした時に黒赤のデザインにしまして、個人的にも好きなんです。最近市場でも赤い良質なプロダクトが増えてると感じてます。私としては文字まで光らせたかったんですけど(笑)かなりしつこく相談しましたが、そこはできなかったです。

R:この光具合はステージでの視認性も考えてますよね。

山里:そうですね、実際ステージだと光らないとなにも見えない。その点JD-XAは好きな箇所だけ光らせることもできるんですよ。使うところだけにすっと手がいくような。しかもマニアックな機能ですが光るパターンは16種類覚えられるんですよ。

R:これは目から鱗の機能なのでマニュアル読んで是非使って欲しい! 優れたアナログデジタルサウンドの融合、高いパフォーマンス性から、シンセサイザースタジオシステムの中核にもなれる懐の深さ、まさに全く新しいワークステーションシンセサイザーの誕生と言えます。
では最後にお二人からユーザーへ向けてメッセージをいただけますでしょうか。

山里:昔私が設計したGAIAの開発当時、最後仕上げる段階に梯さんのところに持っていくと、一箇所ずつ全部のつまみを触って試してもらいました。ローランドを作った頃に一人でSH-1000を持って、NAMMショーでデモをされた経緯を例にされ、「お前もこういう音を作れ」なんて言われたりもしました。その情熱、こういうところが大事なんだというのを教えて貰った部分もあります。僕自身も当時得るものが相当ありました。JD-XAその一つの成果にもなっています。
JD-XAでは時に破綻するほど振り切ったサウンド表現であっても、それもユーザーの選択肢として捉え、価格帯こそ高くなりましたがアナログ/デジタル双方に妥協のない構造と振る舞いを持たせることが出来ました。是非そのクロスオーバーから生み出される新たなサウンドを体感してもらいたいです。

石井: とにかく実機に触って音を出してみて欲しい。これまでソフトしか触ってなかった人で、今ハードに興味がある人には特に触ってほしい。なぜかというとJD-XAのユーザーインターフェイスはGAIAとほとんど同じなんです。GAIA自体も6年目ですがおかげさまで売れていて、これでシンセを始めるんだという人が後を絶たないんです。GAIAをマスターしたから次に行こうかなと思った時に、およそソフトか憧れのNordLeadかDave smithかっていう路線があります。せっかくGAIAで培ったものが活きるように、そのままの知識でも次の次元のサウンドへ行けるんですよ、というのを体験して欲しいですね。
それこそGAIAを知らない人でも、ハイエンドシンセサイザーを持ったコアユーザーであっても。ピッチでもLFOでも、JD-XAに触れた瞬間、それが次の次元のシンセサイザーなんだと誰もがわかるはずです。

デジタルとアナログの岐路を指す名『JD』が導く未来


かつてデジタルにアナログの操作性を取り入れ、プロフェッショナルから絶大な支持を集めたJD-800。クロスオーバーという言葉の解釈からも、このアナログシンセサイザーがJDの名を冠したのは必然と言えるだろう。磨き抜かれたデジタル技術も内包している点では同社30年以上の重みを持ち併せたシンセサイザーと言えるだろう。
執筆前日に行われた発表会では同社AIRAシリーズによるACB(Analog Cercuit Behavier)という次世代のデジタル技術と、クロスオーバーコンセプトが織りなす30年ぶりのRolandアナログサウンドが競演を果たした。以前ACB技術が発表された際に、アナログ/デジタル論争は一定の終わりを迎えたと思ったが、JD-XAが誕生したことで今後再び純粋にシンセサイザーが持つサウンドと表現力に焦点が当たっていくのではないだろうか。
オシレーターやピッチ、フィルターやLFO、エフェクトからD/A段、PCとの親和性やコントロールに至るまで、シンセサイザーを構成する要素は今後、PCMでもVAでもアナログ回路でもいい。ユーザーが欲しい音に併せて自由に選択するリアルシンセサイザーの誕生はすぐそこかもしれない。
JD-XAが放つサウンドは、過去と惜別し、未来に進みだした新生Rolandの咆哮のように思える。

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